オトコの病気新常識 著者:伊藤隼也
02 前立腺肥大症

 それにもかかわらず、「前立腺肥大症は薬で治す病気」とやみくもに信じる医師や患者がいまでも多いことを、設楽医師は気にかけている。

薬物治療は、症状の改善にはつながっても、完治させることはできません。医師の知識不足が患者の選択肢の幅を狭めてしまうのは、非常に惜しいことです」

 HoLEPに関しても、医師の知識とそれに裏付けられた高いレベルの技術を伴ってこそ、前立腺肥大症の最良の治療の一つになる。

 以前は、HoLEPの看板を掲げる病院のなかには、治療時間が長く、尿失禁の後遺症が長引くような施設もあったが、近年ではHoLEPの有効性は学会でも認められるようになり、確かな技術を持った医師が増えている。いまや、HoLEPは前立腺肥大症治療の有力な選択肢の一つと考えてよさそうだ。

前立腺肥大症の症状はノコギリヤシで改善するのか?

 ノコギリヤシという植物をご存じだろうか。北米の海岸部に自生しているヤシ科の植物で、ノコギリ状の葉をもつことからこの名前が付いている。アメリカの先住民の間では、古くからこの植物の果実をスタミナ源として食べる習慣があったという。

 このノコギリヤシの果実に含まれるエキスが、前立腺肥大症で起こる排尿困難などの症状を軽減させる効果があるという説がある。最近では、ノコギリヤシのエキスの成分を配合したサプリメントがさまざまなメーカーから発売されているが、そもそもこの説に科学的根拠はあるのだろうか。

 ある製薬会社が東京都内の医療機関の協力を得て実施した臨床試験によると、ノコギリヤシのエキスを含んだ食品を8週間とり続けた患者は、同形状のニセモノをとり続けた患者に比べ、IPSS(2ページ参照)において改善が見られた。また、残尿感や尿の勢いの低下といった閉塞症状にも改善が見られ、頻尿、尿意切迫感などの刺激症状においても改善傾向を示した。

『オトコの病気
新常識』

著者:伊藤隼也
講談社
定価1,575円(税込)
⇒本を購入する(AMAZON)

 この結果について同社は、「ノコギリヤシは健康食品として日本でも広く使用されてきたが、前立腺肥大症患者について有効性が日本人で確認されたのは、今回の研究が初めて」と発表している。なお、この研究成果は、2008年に行われた第11回日本補完代替医療学会で発表された。

 その一方で、海外では、「ノコギリヤシは、前立腺肥大症で起こる尿路症状の改善に効果はない」とする意見もいまだ根強い。

 アメリカで行われた調査によると、ノコギリヤシの効果に関する数々の研究の中から一定の基準を満たすものを抽出して総合的に検討した結果、IPSSのスコア、閉塞症状、刺激症状のいずれにおいても、偽薬を上回る効果は見られないという結論に達した。