オトコの病気新常識 著者:伊藤隼也
02 前立腺肥大症

 検査の際に最も大切なのは、似たような症状をともなう前立腺がんと区別することだ。そのために、前立腺がんが疑われる患者には、PSA検査や超音波検査なども行われる。

 治療は症状の進み具合によって、経過観察から薬物治療へ、そして症状が重ければ手術となる。最近では、重症患者に対しては「ホルミウムレーザー」を使った痛みの少ない治療をすることが多い。この治療の第一人者、渕野辺総合病院泌尿器科部長の設楽敏也医師に話を聞いた。

 設楽医師が力を入れているのは、「HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)」と呼ばれる治療法だ。これは、尿道から差し込んだ細いファイバーでホルミウムレーザーを照射して肥大部をくりぬき、それを生理食塩水で満たされた膀胱内に落とし、モーセレーター(鋭い刃で病変を粉砕しながら吸引する管状の機器)で取り出す方法。

 つまり、栗の実と皮の境目をたどりながら、実だけをていねいにはがし、粉々にして吸い出すというわけである(イラスト2参照)。

 患者は腰椎(ようつい)麻酔をかけられ、足を軽く開いて仰向けになる。この状態で患者の尿道からレーザー付きの内視鏡を差し込んで、患部にレーザーファイバーを小刻みにあてていく。治療にかかる時間はたったの1時間だ。

痛みの少ない手術「HoLEP」痛み止めが不要なことも

 従来は「TURP(経尿道的前立腺切除術)」という手術法が前立腺肥大症の世界標準とされてきた。これは、尿道から内視鏡を入れ、肥大した部分を電気メスで削り取る方法だ(イラスト2参照)。しかし、この方法をとると一定量の出血があり、まれに輸血が必要になることもある上、頭痛、おう吐、けいれんなどの、水中毒と呼ばれる合併症が起きるリスクもある。

PSA検査
前立腺特異抗原検査。PSAは前立腺で産生されるタンパクで、前立腺がんを発症すると血液中に漏れ、その濃度が上がる。よって、血液中のPSAの値を調べることで、前立腺がんの発症の有無を推測することができる。

超音波検査
前立腺肥大症や前立腺がんの検査の場合は、肛門から細い超音波発生装置(プローブ)を挿入して行う。肥大した部分の大きさや腫瘍の有無などが分かる。

生理食塩水
血液や体液と浸透圧がほぼ等しい約0・9%の食塩水のこと。水分欠乏時の点滴や注射薬の基剤、ケガの際の皮膚洗浄などに使われる。

腰椎麻酔
下半身の知覚をマヒさせるための局所麻酔法。背部から腰椎を通してくも膜下腔内に注射針を入れ、局所麻酔薬を注入する。

水中毒
体内の水分が過剰になった結果、電解質のバランスが崩れ、低ナトリウム血症を起こす。軽度の症状は疲労感や頭痛、吐き気などだが、重度になると昏睡(こんすい)状態となり、死に至ることもある。