「2035年ガソリン車廃止」急加速するEVシフトの“不都合すぎる真実”

EVの方が省エネだとは全く言えない
朝香 豊 プロフィール

EVは本当に環境にやさしいのか

こうしたガソリン車に対する差別とEVに対する優遇策の結果として、EVが選ばれる流れがどんどんと加速しているにすぎない。裏を返せば、こうしたEV優遇策とガソリン車に対する差別をなくせば、消費者がEVを選択するかどうかは、大いに疑問であるとも言える。

そもそも、EVの方がガソリン車よりも環境にやさしいということ自体に疑問符がつく。

確かにEVは走行中にはCO2は発生しないし、音も静かだ。だが、EVは高出力のバッテリーを搭載しなければならず、そのためには希少な「リチウム」が必要になる。全固体電池になればリチウムが必要なくなると勘違いしている人もいるが、全固体電池が高出力を必要とする以上、イオン化傾向が高くて軽いリチウムを使い続ける必要がある。

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リチウムの産出は塩類平原の地下に眠る塩水(地下水)を汲み上げて、これを天日乾燥させてから精製するのが主流である。そして精製段階において大量の真水が必要となる。地上が塩類平原となっているのは乾燥地帯であるからで、ここで大量の真水を必要とすることは、現地で農業を行って暮らす人たちには深刻な問題である。

リチウムは鉱石からも採掘されているが、この精製過程の廃棄物として硫酸ナトリウムなど大量の残渣が発生し、これが環境上の観点から問題視されている。そのため、先進国で採掘されたリチウム鉱石は、一旦、環境規制のゆるい中国に運ばれて、中国で精製されているものが多いという“不都合な真実”がある。サプライチェーンで中国依存が高いことも問題点として認識しておくべきだろう。

現状ではリチウム以上に希少な「コバルト」も大量に必要になっているが、コバルトの現在の世界生産量では、生産されたコバルトをすべてEVに利用するとしても、年間100万台程度が限界であることが指摘されている。

現在世界では年間1億台ほどの自動車が生産されていることからすれば、コバルトを使った自動車生産はすぐに限界がやってくる。ただし将来は様々な観点でコバルトを使用しないLFP電池(リチウム・鉄・リンを正極に利用するリチウム電池)が主流になると見られているので、この問題はいずれ解決可能とみなすことはできる。

 

では、それで万々歳かというと、決してそういうわけでもない。リチウムの現在の世界採掘量では採掘された全量をEVに利用するとしても、やはり年間700万台が限界だとされている。つまり世界中の自動車がEVになることなど、最初から不可能なのである。

カナダの鉱山企業のアルモンティ・インダストリーズのルイス・ブラックCEOは「ガソリン車をEVに切り替える作業を始める上で、現在生産されている鉱物資源は十分な量というには程遠い」と述べている。

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