妊婦にこんなことするんだ…結婚せずに出産して見えた「日本の現実」

松田青子さんインタビュー
小泉 なつみ プロフィール

“妊婦”目線で物事を見るということ

「妊婦」や「育児中」となったことで浮かび上がってきたのは社会の悪い面ばかりではなく、いい側面もある。松田さんはいい面も悪い面も「フィールドワークのように体験している」と話すが、そうして周りに注意を向けられる人は、いつでも誰かとつながれる、開かれた人だと思う。そんな関係性を松田さんは、「ゆるやかなネットワーク」と表現する。

「妊娠中に起きた出来事って、“私”がどう思うかというよりも、『妊婦にこんなことするんだ』みたいに、お腹の大きい妊婦に対して世間がどんな対応をするのか、“妊婦”目線で物事を見ている自分に気がつきました。

私の姿を見た途端、『早く座って』と広い席に案内してくれた中華料理屋さんもあれば、突き出たお腹には目もくれず、予約していて席も空いていたのに『お連れ様がお見えでないと案内できません』と、絶対に座らせてくれない洋菓子屋さんもあって。まるで大きなお腹がリトマス試験紙となって、コミュニケーションの断絶とゆるやかなネットワークを浮かび上がらせたようでした。

子連れの時に嬉しかったのは、これもエッセイに書きましたが、病院でうちの子どもが泣いていたので、一緒にいた私の母が『うるさくてごめんね』と近くにいた女の子に声をかけたら、『うるさくないね、かわいいね』とその女の子の母親らしき女性がその子にいってくれたこと、公園で知り合った子連れの女性が電車の見えるスポットを教えてくれたこと……たくさんありますが、どれも本当に心に残りました。こういうゆるいつながりがあらゆる場所で感じられる社会だったら、どんなに安心して過ごせるだろうかと思います」

(撮影=間部百合)
 

哺乳瓶の乳首やストローマグの部品を消毒したり、あせもができないよう日に何度も体を拭いて着替えをさせたり、大量の予防接種をスケジュール通りこなしたり……。育児は、本当に細かいことの積み重ねでできている(実際、予防接種を受ける前には何枚もの予診票を書く、という非常に面倒な作業がある。そこに出生時の体重を毎回書かなきゃいけないので、体重を暗記したりもする)。

そんな育児書やSNSからはこぼれ落ちてしまうささやかな部分や、いいことも悪いこともある日々のグラデーションも、エッセイの中に落とし込んだ。

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