2021.08.14
# ライフ # 日本

妊婦にこんなことするんだ…結婚せずに出産して見えた「日本の現実」

松田青子さんインタビュー
小泉 なつみ プロフィール

昔から“普通”の枠に入れなかった

《制度や「普通」の枠におさまっていないから自由、というのはちょっと違うように思う。
自分の、名字を変えたくない、という気持ちを尊重するためには、「普通」を諦めるしかないのが現状だ。制度のほうが、「普通」の枠を広げたらいいやないか、そっちの「普通」が狭いくせに、こっちにドヤ顔してくんなよ、という気持ちでいつもいる》

松田さんは感じた違和感に蓋をせず、自分なりの「普通」を大切にする。制度や規則、目標みたいなものを掲げられるとつい自分の気持ちをおきざりにして、「お上」的なものの言うことに従ってしまいがちな私は、何度も目を開かされた。

 

「子どもの頃から学校みたいな場所でうまくやれないタイプだったんです。アトピーがひどい時期もありましたし、そのせいで社交的になれず、“普通”の枠に入れない意識が強くありました。学校も休みがちで、本ばかり読んでいました。理由なく“普通”とされている物事に早い段階から違和感があったんです。ただ、自分はこういう風にしか生きられないというだけで、自分が強いとか、そういうことではないんです。それに今はSNSで『これはおかしい!』と声を上げている女性たちがたくさんいます。だから自分が特別だとはまったく思わないです。

そもそも私は妊娠中、SNSだったり、友人たちの経験談に助けられてきたところが大きくて。かつて妊婦だった友人たちから、こういうひどいことがある、と聞いていたことで、実際に自分が体験してそのとおりだったことがいくつもあります。

そのひとつが、本の中にも書きましたが、優先席が空いてない問題。妊娠後期のお腹がまんまるだった頃、あまり混んでいない電車の優先席に行ったら、座っていたサラリーマンはその瞬間寝たふりをはじめ、横の男子高校生はゲーム機からまったく目を離さず、足をだらっと前に投げ出していました。よく優先席の問題を誰かが語るたびに、みんな疲れている、優先席に座っていても気づいたら席を譲る、なぜ自分だけ楽ができると思っているのか等のコメントが並びますが、自分がしんどい時、何かの理由で体の在り方が一変した時に、優先席という場所がどれだけ必要になるか、想像してみてほしいです。優先席に座っていても気づいたら席を譲る、というのも、人が座っている時点で近づかない人もいるはずです。また、優先席を必要としている人に席を譲れないほど疲れてしまうような、余裕のない働き方を“普通”にしてしまっている社会の仕組み自体がおかしい、とも思っています。

妊娠中、育児中は、女性は社会から取り残されると言われ、また仕事をはじめる時に“社会復帰”という言葉が使われたりもしますが、児童手当の金額の安さや保育園の入りにくさとか、子どもを持ったことで経験したあれこれは、本当に今の社会や政治に直結していることばかりで、人生で最も社会を感じた3年間でした。一番状況としての不条理さに驚いたのは、私の小説『持続可能な魂の利用』に書いたのですが、0歳から『後期高齢者支援金』を徴収されることです。0歳はお金持ってないのに、生まれた瞬間から支援要員なんだなと。『個人的なことは政治的なこと』という言葉がありますが、まさにそれを痛感することばかりで、それらすべてエッセイに書きたかったんです」

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