2021.08.07
# 観光 # 鉄道

地方鉄道の苦しい実情…「旅行できない夏休み」が観光鉄道に与える大きなダメージ

津軽鉄道線のこれまでとこれから
佐藤 信之 プロフィール

次第に、物語が進んで津軽半島の自然の中に入ると、思わず幼いころの自分に戻り、雀躍して走り回わった思い出が噴出したのである。

太宰は、かならずしも地元では評価されていなかったが、東京で文壇の異端児として注目を浴びると、地元でも次第にその評価が改まっていき、いまやその実家が観光施設になっているのである。

金木町が統合された五所川原市では、観光地として、立佞武多(たちねぷた)と斜陽館が人気を二分している。さらに金木駅の次の芦野公園は県立公園で、5月の桜の時期には、満開の桜のトンネルを走る津軽鉄道の列車の様子が圧巻である。

2013年の立佞武多[Photo by gettyimages]
 

新型コロナで観光鉄道は苦境に

令和2年2月には、国内でも新型コロナの感染者が発生し、特に横浜港に係留された客船内に患者が出現して注目が集まった。

その後一気に国内の感染者が増えていき、4月7日には当時の安倍晋三首相が、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡を対象に緊急事態宣言を発出し、16日には全国に拡大した。それにより、小中学校は休校し、リモートワークの推奨、移動の自粛で、人々は巣ごもり生活に入った。

津軽鉄道は、生活交通としての利用が少なくなってしまい、観光客の誘致を図ってきた。観光客は、その多くが金木駅で下車して斜陽館に向かう。

斜陽館の入館者数は、令和1年の夏には1か月間で12000人を超えていた。多くが観光バスによる団体客なのであるが、津軽鉄道の乗車と斜陽館を組み合わせたツアーも多く設定されている。

斜陽館の入館者数の推移(筆者作成)
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一方冬は、寒さと降雪で観光客は減り、斜陽館の入館者も2000人台まで落ち込むが、地元の若者たちが「地吹雪ツアー」を企画するなど、冬の観光需要の掘り起こしにも努めてきた。

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