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「電子書籍の台頭による出版社没落論」はどこが間違っていたのか?

電子書籍の歴史を振り返る・後編

出版科学研究所によれば、2021年上半期の出版市場(紙+電子)は8632億円で前年同期比8.6%増、電子は2187億円で24.1%増と2019年以降3年連続のプラス成長を果たしている。その牽引役が毎年市場規模を大幅更新し続ける電子書籍である。

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しかしその実態は、2010年の「電子書籍元年」のころさかんに言われた「中抜きしている出版社は不要になる」といった予想とはずいぶん異なる。果たして「電子書籍台頭による出版社没落論」はどこが間違っていたのか?

また、我が世の春を謳歌するかのような今日の電子書籍の世界に残された課題とは何か?

1992年に設立され、電子出版事業を一貫して手がけてきたボイジャーの創業者である萩野正昭氏と、2013年よりインプレス「電子書籍ビジネス調査報告書」執筆者を務めるO2O Book Biz代表・落合早苗氏に語ってもらった。

<【前編】圧倒的成長を遂げる「電子書籍」市場…しかし、今に至る道のりは平たんではなかった>

 

出版社不要論の終焉と投稿サイト隆盛が意味するもの

――2010年前後によく言われた「作家が自分で電子出版できるんだから出版社や編集者は不要になる」という話はほぼ潰え、電子書籍市場の売上の大半はクリエイター個人が手がけたものではなく出版社・編集者が関与したものが占めています。

萩野 あのころ出てきたのは「出版社は動きが遅い。俺たちがやろう」といった短絡的なものだった。結局、作品を世に届けるには、媒介してくれる中間者は必要なんです。

落合 アメリカ人のKDPで売れているのはロマンス小説なんですよね。読者も著者も近くてコミュニティがあるジャンルが伸びた。日本ではKDPではなく小説投稿サイトが飛躍的に成長しましたが、やはり読者と書き手の距離が近いジャンルが盛り上がっている。

電子書籍を作家がひとりでやってヒットさせるには作品のプロデュース、執筆、ファイル制作、マーケティング、プロモーション等々を全部個人でやらないといけない。それは普通の人には不可能です。

萩野 ものを売るにはそのためのやり方やルールがある。ただし2010年代以降の動きとしてはまさに今言った投稿サイトの存在がある。あれは出版社が培ってきたものではないやり方で作品を広めていく方法を提供した。作家と読者とを結ぶ真ん中にこれまでは出版社があった。けれども、これからは企業や国家ではないある種の「チーム」が重視される兆しも見えてきている。

ダグラス・ラシュコフはそれを「チーム・ヒューマン」と呼んでいます。その動きが新しい出版メディアを作っていくだろうと僕は思っている。

落合 書き手の本音としては「お金がほしい」より前に「読んでほしい」があるんですよね。投稿サイトは出版社の新人賞システムでは満たされなかったその需要を満たすことで隆盛している。「読んでほしい」と「作品(の質)を評価してほしい」、さらには 「いくら儲かるのか」はそれぞれベクトルが違う問題ですから、分けて考えたほうがいい。

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