圧倒的成長を遂げる「電子書籍」市場…しかし、今に至る道のりは平たんではなかった

電子書籍の歴史を振り返る・前編

インプレス発表の2020年度の電子書籍市場規模は4821億円と推計され、2019年度の2750億円から1071億円(28.6%)増加し、2025年度には6700億円を超える市場に成長すると予測されている(『電子書籍ビジネス調査報告書2021』)。電子書籍が出版不況を終わらせ、再成長を牽引していると言っても過言ではないほど存在感を持つようになった。

ところがわずか10年ほど前、iPad登場によって何度目かの「電子書籍元年」と呼ばれた2010年に刊行された萩野正昭『電子書籍奮戦記』(新潮社)には「現在、多くの日本の出版社が書籍の電子化に二の足を踏んでいます」と書かれている。2010年代初頭には無数の電子書籍専用端末が発売されたものの、電子化タイトルはわずか数万点で、まだまだ利便性を欠いていた。

検索も同様だ。2021年5月に『なかったことにしたくない。 電子書籍をさがすならhon.jpの5122日』(ボイジャー)を刊行した落合早苗が関わった株式会社hon.jpは電子書籍のデータベースを作り、電子書店横断型の検索サービスを提供していた。かつてはどの本が電子化されているのか、どこで配信されているのかを知るのも一苦労だったのだ。

今日の電子書籍市場の隆盛はどんな試行錯誤と蓄積の上に成り立っているのか。1992年に設立されたボイジャーの創業者である萩野正昭氏と、2013年よりインプレス「電子書籍ビジネス調査報告書」執筆者を務めるO2O Book Biz代表・落合早苗氏に語ってもらった。

ボイジャー社の来歴
 

90年代マルチメディアの夢から2000年代ガラケーへ

――電子書籍の歴史をざっと振り返ってみますと、CD-ROMなどで展開された90年代の電子書籍はマルチメディアの夢を追っていましたよね。音や映像と文字が合体するリッチコンテンツが電子書籍で実現するのだ、と。

萩野 紙の本から音が出てきて映像が動くことはありえないわけですから、「これはすごい」と思ってうつつを抜かしたわけです。僕らとジョイントベンチャーを作ったアメリカのボイジャー社はその最先端だった。

ところがOSやマシンが変わるとせっかく作ったコンテンツが読み込めなくってしまう。僕は電子書籍普及のカギを「コンテンツ」、「ハードウェア」、電子書籍リーダーで読み込むファイルの「フォーマット」、「デリバリー」の4点だと整理したことがありますが、90年代の時点ですでに電子書籍流通における「ハード」と「フォーマット」の問題に突き当たっていた。それで僕らはOSやハードに縛られず、極力どの端末でも使える汎用的なフォーマット「.book」の開発に進んでいった。

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