昨年、世界的に権威のある医学雑誌『Lancet』に発表された研究(※3)によると、日本は世界の中でワクチンの安全性や有効性に対する信頼が最も低い、とされています。この論文の中で、2013年に厚生労働省がHPVワクチンの積極的勧奨を差し控えたことがその原因ではないかと分析されています。

WHO(世界保健機関)は2019年に、「世界の健康に対する10の脅威」の1つに、ワクチンの信頼性の低下をあげています。ワクチンの接種率が低下すると、麻疹(はしか)などワクチンで予防できるはずの病気が流行してしまいます。

守れる命を守るためにも、ワクチンの存在は欠かせません。ただ、予防接種は健康な人が予防のために接種するものですので、当然、リスクが大きいものは許容されませんし、実際のリスクにかかわらず、「危険かもしれない」と思っている人が接種したくないと思うのも当然です。エビデンスに基づいた安全性と有効性を公的機関がしっかりと分かりやすく発信し、国民に理解してもらう努力が必要ですし、そのために専門家の存在があると思います。

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コロナ対応に追われる今だからこそ、HPVワクチンの早急な検討再開を

新型コロナウイルス感染症は、老若男女問わず感染しうる、重症化リスクや死亡率がHPVに比べると高いウイルスです。日常生活や経済活動に大きな影響を与え、世界中で感染が猛威を奮っているからこそ、国を挙げて感染対策にあたっています。国も自治体も、マンパワーも予算もとにかく今はコロナ対策が優先となっています。

しかしながら、病気はコロナだけではありません。感染症はコロナだけではありません。

すでに有効なワクチンがある感染症については、エビデンスに基づいた有効性と安全性についての情報を国民に伝え、接種の機会を平等に与えることは、国民の健康を守るためにも非常に重要です。

コロナ対応に追われているからと、HPVワクチンの積極的勧奨を差し控えたままにしておくことは、HPVワクチンの信頼が不当に低いままとなり、それにより新型コロナワクチンの安全性に対しても必要以上の懸念を持たれてしまうことになりかねません。

HPVワクチンの積極的勧奨はすぐに再開できるわけではなく、差し控えを決定した副反応検討部会での検討が必要となります。検討する上でのエビデンスはこの8年の間に十分に蓄積されています。

HPVワクチンの問題は、HPVに限った問題ではなく、ワクチン全般への信頼、ひいては新型コロナウイルス感染症対策にまでかかわる問題です。国をあげてコロナに立ち向かっている今、その最大の武器がワクチンです。ワクチンへの信頼が求められる今だからこそ、HPVワクチンの積極的勧奨についての早急な検討再開が求められるのではないでしょうか。

※記事の内容は2021年8月3日現在の情報に基づきます。