青木理氏(左)と安田浩一氏(右)

怠慢で不勉強で不寛容で排他的なやつらが、どうして増えちまったんだ?

この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体

硬骨のジャーナリスト2人がネットの誹謗中傷、ヘイトスピーチ、メディアの人権感覚の欠如などについて熱く語り合う話題の書『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』(青木理、安田浩一著)の読みどころとは?

これは障がいを理由にしたわがままか?

本書のあとがきで、著者のひとり安田浩一さんが、JR伊東線来宮(きのみや)駅(静岡県熱海市)に赴かれたときの様子を描写されています。

来宮駅は無人駅で、ふだん駅員はいません。ホームから改札に至るためには、24段の階段を降りる必要がありますが、昇降用のエレベーターなどはもちろん備え付けられておらず、足の不自由な人はこの駅のホームで立ち往生するほかありません。

足に重い障がいを持つコラムニストの女性が、この駅の使用をJRに問い合わせたところ、「来宮駅は階段しかないので案内はできない」と言われたそうです。長い交渉の結果(本文にはサラッと書かれていますが、この「交渉」がとんでもなく時間を要し、空虚感や絶望感をともなうつらい作業であることは、容易に類推できます)、最終的に来宮駅の1つ手前の熱海駅で駅員が4人待っていて、「今回は特別」として来宮駅の階段移動を手伝ってくれたそうです。

 

彼女がすさまじいバッシングを受けたのはこの後でした。「単なるクレーマー」「障がいを理由にしたわがまま」「駅員の負担を考えろ。感謝が足りない」「迷惑行為だ」。殺到する非難と中傷がプレッシャーとなり、彼女は一時、外出を控えるようになったそうです。

彼女同様、と言うと語弊がありますが、自分も足が悪いので、24段の階段しかない駅は利用できません。駅をどうしても使いたければ、それこそ嫌になるほど長い「交渉」を経なければなりません。交渉が続くあいだ、自分は世の中に受けいれられていないという現実に直面させられ、多くの人々がまるで不寛容だということ(つまり、すっげーちっちぇえってこと)を目のあたりにしなければなりません。

自分はおそらく、それに耐えることはできないでしょう。まずは来宮駅を利用せずに目的地に到達する手段はないか、それから探したでしょう。

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