イタリアへのこだわり

なぜそんなにイタリアにこだわるのか? それは長男が生まれた年、約10カ月間、イタリアのペルージャという街に語学留学していたことがあるのだ。短い間ではあったが、夫もわたしもイタリアの虜になった。

イタリア留学していた陽一さん。晴美さんは日本での出産後、太一くんを連れてイタリアに合流した 写真提供/杉山晴美
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明るい太陽、陽気な人柄、美味しい食べ物、ゆっくりと流れる時間。中世にタイムスリップしてしまったのではと錯覚してしまうような古いその街での暮らしは、夫にとってかけがえのないものだったのであろう。

普段ストイックなまでに自分を追い込んで生活してしまう性格の夫ではあったが、イタリアにいる時だけは、刹那的に楽天的に、自分を解放できたのかもしれない。イタリアの地を離れれば、また走り出してしまうのだが、けれど、イタリアを思う瞬間だけは、また足を止め、しばし休息が取れたのかもしれない。

イタリアは夫の憧れを凝縮したような国。自分にないものが詰め込まれたような国。いまはアメリカにいながら、いつかイタリアに……という思いから、ミドルネームもこだわったのかもしれない。
もし本当に夫が想弥の体を借りて第二の人生を歩み始めているとしたら、イタリアンネームも手に入れ、鼻高々になっているのでは、とも思うのである。