なでしこが弱くなったというより、
他国の伸びがすごい

思い返せば2011年の世界一のあと、メンバーから「勝ち続けなくては、女子サッカーはブームで終わってしまう」といった悲壮感あふれる声が出た。心から女子サッカーを想う気持ちに心が震えたが、選手が勝ち続けるしかスポーツ文化が育たないという事実を残念に感じた
これまで日本のスポーツは勝つことで競技の強化・普及を進めてきた。普及は普及として環境整備をしていく欧州とは異なる手法だ。そのことが、現場に長く勝利至上主義を蔓延らせ、それに伴って選手への暴力指導が残存している

その「手法の限界」を、なでしこの悲壮に感じるのは私だけではないようだ。

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2012年度全国高校選手権で3位、14年度全国総体準優勝を果たし、『サッカーを楽しむ心を育てて勝つ 京都精華学園高校のマネジメント術』の著書もある同校監督の越智健一郎さん(45)はこう話す。

「2011年(のW杯)は、トップトップの人たちが本当に頑張ってくれて結果が出てしまった。でも、その後はその遺産だけでここまで来てしまった気がする。なでしこが弱くなったのではなく、他国の伸びがすごい。そのなかで女子サッカーは、中高生では少ない人数で行うバトミントンや卓球よりも競技人口が少ない。男子の競技人口にあやかって、女子サッカーもメジャースポーツだと勘違いしてしまうと、破滅の一途をたどるのではと危機感を持っている」

越智さんは、なでしこたちが必要以上に責任を背負ってプレーしていることに対しては「選手の目線から言えば、女子サッカーのために自分たちのできることはいい結果を出すこと。そこは自然なことです」と説明した。

そして、「しかしね」と続ける。

「勝とうが負けようが動じないスポーツ文化を作れば、その競技は勝てるようになる。そこはやはり競技人口が多いか、少ないかの問題。女子サッカーの場合、中学生の競技人口が減っているのは大きな問題でしょう」

京都精華学園高校女子サッカー部を強豪校に育てた越智健一郎監督。「お前」という呼称をやめたり、ディズニーランドにつれていくなどユニークな指導で知られる 写真提供/越智健一郎