あっけないほどの大安産

しかも今回は痛みもほとんどないはずである。これもまたアメリカでは一般的に普及している無痛分娩をあらかじめ希望しておいたためだ。痛みへの恐怖がないぶん、緊張はない。ますます無事な出産への意欲がわく。

指示されるまま、服を着替えベッドに横たわる。リラックスしているわたしに安心したのか、助産婦さんも鼻歌まじりでどんどん準備を進める。担当のドクターもやってきた。促進剤も投与され、麻酔もはいり、病院に着いてたったの2時間半、子宮の収縮がグラフになって映し出されている画面をみながら、「次の波がきたら合図するから、そろそろいきんでみようか」とドクターが言った。

麻酔のおかげですっかり無感覚になり、まったく痛みのないわたしは、きつねにでもつままれた気分であったが、合図されるままいきんでみた。3回ほどそれを繰り返した時、「はーい、出ましたよー。おめでとう」「うそ、ほんとに?」「おぎゃー」「ほんとだ」。出ましたよと、言わなければ気づかないほどの無感覚。マジックかトリックか。とにもかくにも、大安産であった。

「ありがとうございました」

と、まずは言葉が出た。

ドクターも大喜びだった。あの9月以来、幾多の困難にあいながら、お腹の命を守ってくれていた。無事の出産にドクターもほっとしてくれた。

「だんなさんの、まさに忘れ形見の男の子だね」

そして赤ちゃんを抱き上げながら、

「君のお母さんはほんとによくがんばったんだよ。よかったね。無事に産まれてこられて」

と声をかけてくださった。いえいえ、がんばったのはわたしばかりではないはず。お腹のなかのこの子も、ほんとうによくがんばった。最悪の胎教に、よくぞここまで耐えてくれた。そしてなにより、まわりの支えがあったからこそ、今日のこの時がきたのだ。

とにかくほっとした。無事に産むことができてほんとうによかった。

出産直後の晴美さん 写真提供/杉山晴美