3歳と1歳の子供がおり、お腹には4ヵ月の赤ちゃん――杉山晴美さんがそんな状況のとき、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロが起きた。
夫の陽一さんが勤務するワールド・トレード・センターに飛行機が突入するという信じがたい光景を目の当たりにし、探し回るも、行方不明のまま時はすぎ、数カ月後には、前に進むために晴美さんは死亡したことを受け入れざるを得なかった。

そんな晴美さんが20年前のことを決して忘れてはならないと、自身の著書『天に昇った命、降りた命』からの抜粋と書き下ろして伝えていく連載「あの日から20年」、10回目は、突如出産の日をむかえることとなった時のエピソードをお伝えする。前編でお伝えする、予定日より2週間早い日に出産することになった時の奇跡のような話とは……。

このときに妊娠4カ月。それから半年がすぎた日のことだ…Photo by iStock
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どうする?産まれてくる子供の名前

【2月25日】
3番目の子に関しては、生命としてお腹の中に宿ってたかだか4ヵ月弱……。のっけからすっごい目にあっている。ガツンと一発いきなりすっごいパンチが入ってて。

ある意味、姓名判断も何もあったものじゃない。名前なんかついていないうちからすさまじい人生、運命がスタートしていたわけだから。などと言いつつ、上の子ふたりに字画を見てやった手前、3人目も一応字画を気にしながら名前を考えたりする、なんともやはり平凡な、いち母親のわたしなのだけれど。

夫は3人目ができたとわかった時から、ワクワク心躍らせながらミドルネームを考えていた。ブツブツブツブツ……色々な名前を口走り……。

「サルバトーレなんてどうかな?」

お風呂に入りながら言っているのが聞こえる。そして一緒に湯船につかっている太一に「変な名前」と一喝される。

「じゃあ、こんな名前は?」

もうここから先の具体的な名前の記憶は私にはない。こんなことになるなら、ちゃんと聞いておけばよかった。

あの頃は妊娠初期も初期。もっと出産が近くなってからゆっくり聞けばよいと思っていた。まさか名前すら決めることなく夫が逝ってしまうなど、あの頃はユメユメ思いもしなかった。

3歳の太一くんと陽一さん。二人で産まれてくる赤ちゃんの名前の話もしていた 写真提供/杉山晴美