新型コロナショックから回復する世界、取り残される日本

足を引っ張るデジタル化の後進性
野口 悠紀雄 プロフィール

迷走と混乱を繰り返したワクチン接種

日本でワクチンの接種が進んでいないのは、政府が対応を誤ったからだ。実際、ワクチンを巡る日本政府の対応は、迷走と混乱そのものだ。

1日100万回の接種を目指すとの政府の大号令の下で、職域接種の準備が進んだ。ところが、企業が準備を整えた後になって、モデルナ製ワクチンが不足していることが明らかになった。河野大臣は6月23日に、ワクチンの供給不足を発表し、職域接種の中止を表明した。申請は6月25日で休止となり、再開のめどは立ってない。準備を進めた企業は、みごとに梯子をはずされたことになる。
 
自治体の場合にも、混乱が起きた。7月16日、加藤勝信官房長官は、自治体に4000万回分の未接種のワクチンが残っていると指摘し、在庫が多い市町村への国の配分量を1割削減する方針を示した。6月までに供給した8800万回分のうち、VRS(ワクチン接種記録システム)のデータによる接種実績が約4800万回分なので、残りは「自治体や医療機関が持っている」との見方だ。

ところが、自治体側は、「在庫はない」と反論した。VRSは使い勝手が悪く、入力作業が面倒なために作業に遅れが生じているのであり、接種実績はもっと多いというのだ。

VRSは、紙の接種証明書の情報をタブレット端末で読み取って、デジタル情報にする仕組みだ。ところが、接種券に記載された情報をうまく読み取れない。このため、接種の際には、VRSに入力する時間が取れない。急遽職員をかき集めて入力作業を急いたが、間に合わない。

 

VRSはバーコードも読み取り可能だとされていたので、接種券にバーコードを入れた自治体もあった。しかし、実際には読み取ることができなかった。こうして、使われないままのタブレットが会議室に積み上げられていると報道されている。

大阪市の個別接種の診療所では、9割がVRS端末の利用を希望せず、接種日から登録まで平均1カ月の遅れが発生した。そこで、7月以降は接種券をこまめに回収するなどして、遅れを1週間に縮める対応を取ったそうだ。

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