日本人は「天皇制」をどう受け止めてきたか? 決定的に「欠けていた視点」

【対談】大澤真幸×木村草太

【前編】「空気が支配する日本で「天皇制」が担ってきた「意外な役割」」はこちら

【構成:山本ぽてと】

天皇に対する感情はどう変わってきたか

木村 前半では、『むずかしい天皇制』を読み解くためのキーワードについてお話してきました。

大澤 現代の天皇制を見るためのちょっとした資料を持ってきたので、紹介したいと思います。NHK放送文化研究所の「日本人の意識」調査です。1973年から、5年ごとに行われており、その中に「天皇に対してどのような感情を持っていますか」との設問があります。

88年と93年でグラフの形が大きく変わりますよね。理由ははっきりしていて、昭和天皇から平成の天皇に変わったためです。

大澤 昭和天皇の段階では変化に乏しく、細かく見ると「尊敬」が徐々に下がっています。これは戦前から生きていた人たちが、調査があとになればなるほど人口のボリュームとして少なくなっていったためです。

昭和(88年)と、平成(93年)の間の推移を見ると、尊敬が下がり、好感が上がります。尊敬する人が少なくなったのは、それまでの尊敬は昭和天皇に向けるものであり、平成の天皇になった瞬間に尊敬する理由がないからでしょう。

面白いのは、「好感」が上がり、「無感情」と答えた人が下がっていることです。ここから推測できることは、昭和における「無感情」とは、昭和天皇に好感を持てない消極的な意味での反感であった、ということです。これが私の仮説です。どうしてそう考えるかというと、このグラフは、昭和における「無感情」が、昭和天皇没後に、「好感」に転じたことを示唆していますよね。

 

ということは、昭和の「無感情」は、昭和天皇であったがゆえに、あえて「好感」を抑圧していた、ということなのです。つまり昭和天皇ゆえに好感を持ちきれないと思っていた、そのことが「無感情」という回答になっていたのです。昭和と平成の「無感情」は意味の異なったものなのではないでしょうか。平成の「無感情」は、単純に無関心に近い。

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