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「米中半導体戦争」のカギを握る台湾TSMC、その「したたかな戦略」と日本への影響

世界的に深刻な半導体不足が続く中、いま注目が集まるのが台湾のファウンドリー(受託生産企業)、TSMCだ。アップルやクオルコムなどの大手メーカーを顧客に抱え、ファウンドリーシェアの過半を占める「世界の半導体工場」は、米中覇権争いのカギを握る企業のうちの一社と言っても過言ではない。
米中の板挟みになりながらもしたたかに立ち回る同社の戦略と、気になる日本との関係を、米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が解説する。

ついに中国企業の米国上場が困難に

中国の若者向けドラマを見ていると、人々の羨望の的としてよく描かれるのが「海亀(ハイグイ)」と呼ばれる帰国子女達だ。

アメリカ帰りのイケメンがハイテク企業の若きCEO(最高経営者)だ、という筋書きが典型的。彼らは高級マンションに住んでブランド物スーツを着こなし、寿司を食べ、ジムで体を鍛え、英語を流暢に操る。丁度、日本の「ヒルズ族」のような扱いだ。ただし、海亀族を演じる俳優の英語が役に追いついてないことも多くて、ギャップが面白い。

中国に帰国する「海亀」留学生が競って就職するのが、アリババ(阿里巴巴集団、BABA)やテンセント(騰訊、TCEHY)、シャオミ(小米 XIACY)など、米国に株式を上場する巨大中国テック企業群だ。検索エンジンのバイドゥ(百度、BIDU)などは、創業者も海亀族だ。

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だが近頃は、海亀の人気企業は受難続きだ。

昨年11月、アリババ傘下のアントグループが香港と上海で計画していた「史上最大のIPO(株式初公開)」が、予定日の2日前という土壇場で頓挫したこと(参照:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77160)が記憶に新しい。

先月4日には米国IPOに踏み切った配車サービスDiDi(滴滴、銘柄コードDIDI)に対し、中国当局が、個人情報漏洩の恐れを理由に、アプリの配信停止を命令した。IPOから4日後。世界ユーザー5億人、ドライバーだけでも1500万人という巨大サービスが、アプリストアから消えたのだ。

中国当局は続いて、「100万人以上の個人情報を持つ企業が海外でIPOをする場合、国家安全保障上の審査を受けなければならない」とする方針を打ち出した。「意見聴取」の段階とされたものの、米国で上場するな、という恫喝は十分に伝わる。

米国では店頭取引も含めて240以上の中国企業がADR(米国預託証券)を発行している。中国株の政治リスクの高まりを受け、SEC(米国証券取引委員会)がついに7月30 日、米国での中国企業のIPOについては、中国政府からの許可を得たかなどの追加情報の開示が条件だとして、中国企業の新規上場を事実上停止する動きに出た。

これにより、TikTokを運営するバイトダンス(参照:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74567)など数多くの中国企業が、計画していた米国でのIPO棚上げに追い込まれる雲行きだ。米国上場中国企業の株価指数は2月のピークから35%以上も下がっている(7月30日現在)。これらの企業にとっては、米中双方から平手打ちされた格好だ。

中国では娯楽コンテンツも検閲を受ける。今後はテレビドラマでイケメンが演じるのも、アメリカ帰りの「海亀」ではなくて純中国風になるかもしれない。

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