2021.08.01
# 半導体 # 投資

「米中半導体戦争」のカギを握る台湾TSMC、その「したたかな戦略」と日本への影響

小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

これは中国にとって、衝撃的だっただろう。「半導体国産化」は、まさに悲願になった。

中国は2025年までに半導体需要の7割を内製する目標を掲げている。製造ツールの海外依存を考えるとハードルは極めて高く、2025年でも自足率は2割以下に留まるだろうという推定(調査会社IC  Insights)もあるが、経済安全保障上の優先課題として「挙国体制」で取り組む姿勢は間違いない。

こうした中で、TSMCの立場は複雑だ。最大顧客はアップルだが、昨年まで二番目の顧客はファーウェイだった。一時は売上の14%を占めたこの大口との取引停止は、大打撃になると危ぶまれた。

Photo by Gettyimages
 

ところがどっこい。蓋を開けてみると、昨年の業績は売上が2割以上、利益が4割以上も伸びて絶好調だったのだ。

車載向けを中心に需給がタイトで、強気の価格を出せる今の市場環境が追い風ではある。また中国SMICが米国の「エンティティーリスト」に追加指定されたことを受けて、大手ファブレス企業が委託先をSMICからTSMCに切り替えているのも、大きなメリットになっている。 

だがTSMC自体も、したたかな立ち回りをしている。

例えば、米国で補助金までもらって事業拡大する一方で、中国でも南京工場という製造拠点を確保し、中国の巨大スマホ市場や車載用の需要をしっかり掴んでいる。米国の対中規制は「10ナノ以下」の最先端プロセスが対象だ。つまり、それより遅れた技術を使うならアメリカも見逃してくれるので、TSMCは南京では12〜16ナノとか28ナノプロセスを使って製造している。

最先端でないと言っても、特に車載用の28ナノでは中国でも需要が強くて工場はフル操業。TSMCは7月15日の投資家・アナリストとの電話会議で、南京工場の生産能力は予定通り拡大する方針だと説明した。

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