2021.08.01
# 半導体 # 投資

「米中半導体戦争」のカギを握る台湾TSMC、その「したたかな戦略」と日本への影響

小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

米中覇権争いのど真ん中、TSMCという台湾企業

こうした「米中板挟み」を考えた時、今世界で一番デリケートな立場に置かれている企業は、台湾の半導体メーカー、TSMCだろう。ところが、こちらの株は昨年の底値から二倍になっていて、元気がいい。

Photo by Gettyimages

TSMCはファウンドリー(受託生産企業)と呼ばれる製造に特化した「黒子」だが、半導体業界で知らない人はいない。アップルやクオルコムなどの大手メーカーを顧客に抱え、ファウンドリーシェアの過半を占める「世界の半導体工場」だ。

筆者は投資業界にいた時に、エルピーダや東芝など日の丸半導体企業の大苦戦を目にした。一番の問題は、最先端設備の確保に、会社を潰しかねない巨額投資が必要となることだ。そのため、今では多くの半導体企業が、自前での製造をやめてしまっている。設計だけ自社でやる「ファブレス」モデルを採択し、製造はファウンドリーに外注するのだ。最先端のプロセスで自社一括生産を行うのは、世界的に見てインテルやサムソンに絞られてきている。 

TSMCはこの業界構造変化の追い風を受けて急成長したファウンドリーで、そのスケールはハンパではない。この春打ち出した設備投資計画は、今後3年間で1000億ドル、日本円で約11兆円というものだ。

 

また、技術面でも今や業界トップを独走している。

トランジスタをなるべく小さくして、シリコンチップに集積する数を増やすことで性能を上げる半導体の「微細化」は、有名な「ムーアの法則」に従って飛躍的に進んできた。TSMCが来年商用化を予定する製造プロセスは、「3ナノ」と呼ばれる。「ナノメートル」は10億分の1メートル。新型コロナウィルスの直径が80〜220ナノメートルと言われるので、3ナノメートルはその数十分の1。シリコン原子が30個しか並ばない。

実際には「ムーアの法則」も限界に近づいていて、「○○ナノ」というのはもはや「ブランドネーム」であって、基盤材料であるシリコンウェハーに書き込まれる回路の線幅と同じではない。でもポイントは、処理能力や省エネに優れた最先端品で、インテルやサムソンでさえTSMCに追いつけなくなっているということだ。特にインテルの苦戦が顕著で、「3ナノ」ではインテルが自前主義を捨ててTSMCを採用する観測が出ている。

「3ナノ」より先になると半導体を包むパッケージ構造が変わって競争が変化する可能性もあるが、当面TSMCのダントツリードは変わらないだろう。

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