# オリンピック

一度の不祥事で、人生を「全否定」される…東京五輪で見えてきた「末恐ろしい風潮」

キャンセル・カルチャーをご存じか?
トイアンナ プロフィール

だが、この発言「だけ」で森元会長のキャリアが全否定されてはならない。なぜなら、それは「無罪の人」探しに他ならず、私達の誰もが許されないことを意味するからだ。木村花さんだって当時謝罪し、罵倒された相手が納得したならそれでいいはずだ。小山田さんはこれからいじめを償っていくことになるだろうが、すなわち公的なポジションに二度と就けないことを意味してはならない。

問題発言により辞任した東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗元会長[Photo by gettyimages]
 

キャンセルが「凶悪な武器」にもなる

もし「謝罪したら、あるいは適度な対応がなされたらそれでよしとする」社会をなくしたら、どうなるか。次に訪れるのは「お前も差別主義者だ。お前もキャンセルしてやる」という罵り合いである。

なにせ、過去の発言をひとつ取り出して、相手のキャリアを台無しにしてやれば良くなるのだ。当時はハラスメントとは見なされていなかったこと、問題だったことを取り上げるだけでいい。数十年後、何が問題になっていて、何が加害になるかなど、私にも分からない。しかし、キャンセル・カルチャーは、それをもとにしたキャリアの全否定を可能にしてしまう。

怒りを示すとき、あるいは批判するとき。私達は同時に「どこで手打ちにしてほしいか」を考えるべきなのだ。そうしなければ、次にキャンセルされるのは、「キャンセル・カルチャーを乱用して、人を貶めたあなた」かもしれない。フランス革命後、憎き王族を倒したはずの革命派が次々と仲間割れして処刑を繰り返した歴史は、少なくともそれを教えてくれる。

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