ドイツとロシア直通「海底パイプライン」をバイデン政権が突如許可した理由

ワシントンでいったい何があったのか

いったい何があったのか

ドイツとロシアを結ぶ海底ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」。完成間近だったこの大プロジェクトが、米国の制裁とEUの数多の国々の反対で長らくストップしていたことについては当コラムでも何度も書いた。

ところが今、工事再開が決まり、うまくいけば8月末にも完了し、さらにうまくいけば、年末には運転開始とか。いったい何があったのか?

Gettyimages

米国がこのプロジェクトに参加した企業に制裁をかけ、工事の進行を阻止していた理由は、ヨーロッパがロシアのガスに依存しすぎるという懸念、さらには、米国がNATOでロシアの脅威から守っているはずのヨーロッパが、よりによってロシアと組んでお金儲けをするとはけしからんということだった。どちらも安全保障上の問題と言える。

ただ、「ヨーロッパ」というのは正しくなく、このプロジェクトは冒頭に述べたように、ドイツとロシアの虎の子プロジェクトだった。ドイツ以外のヨーロッパの国々は、それぞれ異なった理由で、ことごとく反対の立場をとっていた。中でも一番激しく反対していたのがウクライナだった。

ウクライナは冷戦時代からずっと、ロシアと西ヨーロッパを結ぶ陸上のガスパイプラインの経由地で、このガス輸送がもたらす収入がウクライナの国家収入のかなりの割合を占めている。一方のロシアにとってもガスの収入は貴重であり、パイプラインを牛耳るウクライナにはそれなりの配慮をせざるを得なかった。

 

しかし、「ノルド・ストリーム2」が稼働すれば、ロシアはヨーロッパ向けのガス輸出に陸上パイプラインを必要としなくなる。これは、ウクライナにとっては単に収入減という問題だけでなく、重篤な安全保障上の問題だ。

ウクライナはそうでなくても2014年以来、クリミア半島を巡ってロシアとは敵対関係にある。パイプラインが不要になれば、ウクライナはロシアに一捻りされる危険が高まる。

少し話を戻すと、ノルド・ストリーム2に反対する米国の声がとりわけ大きくなったのは、トランプ政権の時だった。トランプ嫌いのドイツ人は、米国による内政干渉であると憤ったが、前述のように、同プロジェクトにはEUのほとんどの国が反対だったので、ドイツの分は悪かった。

その後、トランプ氏は敗退したが、米国のノルド・ストリームへの反対は超党派によるものだったため、政権が変わってもその態度は不動だった。それどころか、今年3月にはブリンケン国務長官が制裁措置をさらに強化したため、皆が、プロジェクトは本当に水泡に帰すかと思ったほどだった。

ところが5月末、バイデン大統領は突然、「プロジェクトはすでにほぼ完成しており、これを妨害するのは米欧関係にとって生産的ではない」と言って、制裁を解除した。ドイツ政府がバイデン大統領を就任以来、異常なほど丁重に扱い、ドイツメディアも戦後最大の大統領と持ち上げていたのには理由があったらしい。

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