「女の体に生まれたせいで…」トランスジェンダーでセクハラ被害者の著者が語った“想い”と“苦しみ”

阿部 裕華 プロフィール

――では、絵や漫画を描き始めた時から、すでに自分を描いていたのでしょうか。

ぺス山 さすがに子どもの頃は自分のことを描くのは恥ずかしくてできなかったですね。でも、小中学生の時、同じように絵を描いている子と見せ合いっこをしていたんですよ。根っから物語をつくるのが好きな子と絵の交換をしていると、私はちょっと違うなと頭のどこかで思ってはいました。

とはいえ、大体めちゃくちゃ抑圧された子どもが登場してロックスターに救われるような物語ばかりを描いていた気がします。キャラクターの形を借りて、フィクションというていで自分のことを描いていました。しょっぱなからフィクションにせず、自分のことを描けば早かったように思いますね(笑)。

 

――高校時代はファンタジーを描かれていたんですよね?

ぺス山 そうそう。それも主人公に激しく自分を重ねてのファンタジー作品でしたね。少年漫画を読んでいたり、BLが好きだったりしたので、とにかく血と暴力にまみれたBL漫画を描いていました(笑)。

だけど、だんだんキャラクターの姿を借りるより自分のことを描いた方が早いなと思うようになっていったんですよ。結局描きたいのは自分のことなので。

――自分の内側を他者に見られることに対して、恐怖や不安を感じることはなかったのでしょうか。

ぺス山 たぶん、見てもらえない苦しみの方が上回ったのだと思います。基本的に、本音を言っているようで言っていない子どもだったので。自分の性自認、トランスジェンダーであることも、マゾヒストであることも、誰にも言わなかった。

それからADHDでもあって、本当に生きることに困っていたんですよ。とんでもない忘れ物をして周りの人を困らせることもたくさんありましたし。その当時はADHDという言葉も発達障害という言葉も浸透していなかったから、母親も周囲の人も私のことを「だらしのない健常者」だと思っている。何度言われてもできないことを、言えばできるようになると思っている。できないことに対して誰も触れてくれない・分かってくれないと感じることがたくさんあって、知られる怖さより理解してもらえない怖さや苦しみが上回ってしまったのかも。

『女の体をゆるすまで』第1話より ©ペス山ポピー/やわらかスピリッツ/小学館

――ということは、ご家族にも描いた漫画は見せているんですか?

ぺス山 読ませていないですね。見せることでわざわざ関係が壊れるなら見せない方がいいだろうなと思っています。

漫画を描いているとは言っていますけどね。ぺス山ポピーという名前で活動していることも言っていないです。実家暮らしですけど、絶対に原稿を見られないように私宛に来た封筒は即回収しています(笑)。「絶対に見るなよ!」と言って、隠し通しています。本当は、漫画のアシスタントをしていると言って、漫画家であることは隠し通してきていたんですけど、隠し通せなくなってしまって。

――頻繁に封筒が届いていたら気づかれそうですよね……。

ぺス山 そうなんですよ。一度、確定申告の時にうっかり親の前で書類を書き始めてしまったことがあって。職業欄に漫画家と書かなければいけないけど、その場ではアシスタントと書いて封筒に入れてのりをしたんですよ。その後、夜中に起きてドライヤーでのりをきれいに剥がして封筒を開けて、「漫画家」と書き直すくらいには隠していました(笑)。

ただ、「あまりにも封筒が届くアシスタントって何?」となり、今は「漫画は描いているけど内容は教えられない!」と言っています。墓場まで持っていくつもりです。

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