ひとりぼっちのダーウィン——味方にも理解されなかった主張の本質とは

誤解が解けなかった人生の"つらさ"

ちょっとした誤解でからかわれる"ダーウィン君"

むかし、あるところにダーウィンという小学生がいました。ある日、ダーウィンは小学校で友達と遊んでいて、何の気なしにこう言いました。

「子供を産むのは女の人だよね」

すると、ダーウィンの横にいたド=フリース君が言いました。

「そんなことないよ。だって、僕の叔母さんには子供がいないんだ。女の人なら子供を産むとは限らないさ」

もちろんダーウィンも、女の人のなかには子供を産まない人がいることを知っていました。でも、ダーウィンは「子供を産むのは女の人だ」と言っただけで、「女の人は全員●●子供を産む」と言ったわけではありません。

「ちょっと待ってよ、ド=フリース君。僕は、女の人が全員・・子供を産むなんて言ってないよ」

でも、ダーウィンの声は小さくて、ド=フリース君の耳には届きません。

「ダーウィン君て、女の人ならみんな・・・子供を産むと思ってるんだぜ。間違ってるよね、ダーウィン君は」

ド=フリース君がそう言うと、べイトソン君も一緒になって、ダーウィンのことをからかい始めました。

「僕の家の隣に住んでいるお婆さんにも、子供はいないよ」

「まったく、ダーウィン君て、何も知らないんだね」

【イラスト】ダーウィン君て、何も知らないんだね「ダーウィン君て、何も知らないんだね!」 illustration by gettyimages

もうダーウィンは反論する気力もなくして、今にも泣きだしそうでした。すると、とつぜん大きな声がしました。

味方が現れたのは良いけれど……

「やめろよっ、ダーウィン君をいじめるのは!」

ダーウィンが振り返ると、そこにはウォレス君が立っていました。その隣には、ヴァイスマン君もいます。2人ともダーウィンとは仲良しで、いつもダーウィンの味方をしてくれるのです。ウォレス君ド=フリース君に詰め寄ります。

女の人はみんな●●●子供を産むんだよ。それのどこがおかしいのさ?」

「だ、だって、僕の叔母さんには子供がいないよ」

「そんなことないって。きっと、どこかで子供を産んでるさ。もしかしたら、隠れて産んでるかもしれない。それをド=フリース君が知らないだけだよ」

ヴァイスマン君ウォレス君に加勢します。

「そうだよ、女の人は全員・・子供を産むんだよ。そうだよね、ダーウィン君?」

「えっ?……い、いや、その、女の人が全員子供を産むってわけでは……」

ダーウィンは戸惑っていました。ウォレス君ヴァイスマン君が味方になってくれたのは嬉しいのですが、でも言っていることは間違っています。でも、ウォレス君ヴァイスマン君も、ダーウィンの言葉に耳を傾けてくれません。

「まったく、ド=フリース君たちにも困ったもんだね。女の人が全員子供を産むなんて、当たり前のことじゃないか」

ヴァイスマン君が言うと、ウォレス君も続けます。

「そうだ、ダーウィン君の考えをみんなに広めようよ。『女の人は全員・・子供を産む』っていうダーウィン君の考えをね」

「うん、そうしよう、そうしよう。じゃあね、ダーウィン君」

「ええっ?……ま、待ってよ、ウォレス君ヴァイスマン君。ぼ、僕は、そんなこと、考えてないって」

でも、そう言ったときには、2人はもう駆け出していました。そして、ダーウィンは、どんどん小さくなっていく2人を、茫然と見つめることしかできませんでした。

翌日、ダーウィンが小学校に行くと、廊下に学級新聞が張ってありました。見ると、そこには、こう書いてありました。

『女の人は全員子供を産む』というダーウィン君の考えを、「ダーウィニズム」と呼ぶことにしよう!

【イラスト】壁新聞がはられていた学級新聞には「『女の人は全員子供を産む』というダーウィン君の考えを「ダーウィニズム」と呼ぶことにしよう!」とあった illustration by gettyimages

ダーウィンは目の前が真っ暗になりました。自分が言ってもいないことを、勝手に「ダーウィニズム」とか言われても困ります。

ダーウィンに反対しているド=フリース君やべイトソン君の意見も、ダーウィンの味方であるウォレス君やヴァイスマン君の意見も、ダーウィンの意見とは異なります。

ダーウィンはひとりぼっちでした。

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