「死刑賛成派」も知っておくべき「日本の死刑制度」驚きの“ほころび”

アメリカとの比較で見えること
丸山 泰弘 プロフィール

②の調査では、上で書いたように、回答者に、死刑に関連する情報が与えられている。その中でも特筆すべき情報は以下の事項についてであった。

(ア)「日本の無期懲役刑は現実的に仮釈放がほぼ無い終身刑に近い運用となっていること」(回答者の92%が「ほとんど知らない」か「全く知らない」であった)

(イ)「戦後の殺人事件の発生率は減少していること」(回答者の85%が殺人の発生率は上昇していると考えていた)

(ウ)「死刑制度に抑止効果があるとする科学的根拠は存在しないこと」(回答者の82%が抑止力に対して誤った認識をしていた)

これらの情報が与えられた「実験群」と、与えられていない「統制群」を比較してみよう。結果を見ると、「実験群」のほうが「どちらとも言えない」と回答した人が多くなり、情報を与えられるほどに立場決定に迷う人が増えることを示したと考えられる。佐藤さんの考察によれば、誤解に異議が唱えられたことによって、当初の見解に疑問を持つようになったからではないかと指摘されている。

【佐藤舞さんの調査②】

(参考資料)佐藤舞「日本の世論は死刑を支持しているのか」法律時報第87巻2号(2015)70ページより転載。

また、それぞれの回答について双方のグループで最も大きく回答者数に差が出たのは、「絶対にあった方がいい」の回答であった(情報を与えられたグループでは「絶対にあった方がいい」が大きく減る)。つまり、表面上は「絶対にあった方がいい」と存置に傾倒しているように見えても、その傾向は大きく変化する可能性を秘めていることが佐藤さんによって指摘されている。

そして、③は②のように情報提供のみではなく、その問題について熟考し議論を行える場を提供することで、制度の見方にどのような変化が見られるかを試したものであった。結論的には、回答者の半分は意見を変えず、残りの半分は存置から廃止へと変えた者と廃止から存置へと変えた者の両方があったとのことである。

ただし、その後のインタビュー調査において、自分の意見は存置なのだが反対の意見も理解するという発言や、逆に廃止なのだが存置の人の意見も分かるという発言があり、逆の立場の人への共感も生まれたとされる。

 

いずれにしても、政府として死刑存置を続ける根拠の一つに、「国民世論の賛成多数による」というものがある以上は、国民が正確に判断する前提を作ってから国民の意思を図るべきではないだろうか。

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