ドローに持ち込んだカナダ戦
危機を救ったのは、背番号10の頼れるエースだった。
7月21日、東京オリンピック、サッカー女子グループリーグ初戦。世界ランキング10位のなでしこジャパンは同8位のカナダ代表と札幌ドームで対戦し、1点リードされたまま終盤を迎えていた。
後半39分、右サイドでボールを受け取った長谷川唯が、前線でディフェンスラインの裏を狙う岩渕真奈に向けてロングフィードを送る。岩渕は追い掛けてくる相手の前に巧みに入り、GKのポジションを見てゴール右にボールを蹴り込んだ。

前半から厳しいマークを受け、なかなかチャンスをつくれない時間が続いていた。
同点シーンの2分前。右サイドでボールを奪って左に展開し、途中出場の田中美南がシュートを放った場面があった。トラップした際に手が当たってハンドと判定されたものの、カナダの動きが鈍っていた時間帯。ここを岩渕は見逃さなかった。長年のキャリアによって培われた勝負勘が、あのゴールを手繰り寄せた。
追いついてのドローに価値がある。精神的なダメージが残ったのはむしろ逃げ切れなかったカナダのほうだろう。
エース・岩渕の好調ぶりに期待
今回の東京オリンピック、なでしこジャパンにとってメダル獲得は何としても実現したい目標だ。
しかしながらこのカナダ戦のように簡単な道のりでないのは明らか。出場12チームのうち、アメリカ(1位)、オランダ(4位)、スウェーデン(5位)、ブラジル(7位)、カナダ(8位)、オーストラリア(9位)、そしてイングランド(6位)主体のイギリスと、半数以上が10位の日本よりも格上。ランク上位を相手に勝ち抜いていかなければメダルはない。