検索エンジンもSNSも…ネットに埋め込まれた「ランキング」の功罪

人気が人気を呼ぶ循環構造の不合理
宇田川 敦史 プロフィール

「フェイク・ニュース」でも1位になる

もうひとつの問題は、ランキングが上位であるということと、そのWebページの内容が正確かどうかは、ほとんど関係がないということだ。

先述の通り、検索エンジンのランキングは、あくまでそのキーワードに対して多くの人がどのように行動したか、が主要な判断要素となっている。少なくとも現在のGoogleのアルゴリズムでは、Webページの内容を意味的に解釈してその記述内容が正しいかどうかを判断することはできていないのだ。

このことの弊害を如実に示した事例として、数年前に大きな話題となった「キュレーション・メディア事件」を振り返っておこう。当時DeNA社が運営していた「WELQ」という健康情報サイトが、無断引用・転載による「コピペ」コンテンツをかき集め、大量のWebページを作成した。その際SEOと呼ばれる、検索エンジン・ランキング上位になりやすいテクニックを組織的に用いることで、この不適切コンテンツを検索結果上位に多数掲載させたのだ。それらは検索上位に表示されるために多くのアクセス数を集め、その結果としてDeNA社は多くの広告収益を得ていたとされる。

特に問題視されたのは、生死の不安や医療に関するキーワードに対して、専門性のない虚偽の情報や広告への誘導情報を流し続けたことである。例えば、「死にたい」というキーワードに対して当時WELQのコンテンツは検索ランキング1位となっており、そのページには「死にたいと思ってしまう深層心理」として「承認欲求が強い」などの「解説」がなされた上で、「自己承認力を高める」ために「キャリア診断テスト」を勧めるという強引な内容であった。もちろんこの「キャリア診断テスト」は他の企業の広告である。最終的にWELQは「炎上」状態になり、Webサイト自体が閉鎖されることになった。この事件は、日本で最初の大規模な「フェイク・ニュース」事例ともいわれている。

当時の「WELQ」が(広告直下に)1位掲載されたGoogle検索結果と、キャリア診断を勧めるリンク先のページ(現在は削除されている)(出所:ITMedia, 2016年10月26日)

ランキングは「正しさ」を保証しない

もちろん、金儲けを目的として虚偽の情報を流通させたDeNA社の責任は重い。しかし問題なのは、たとえ虚偽の情報や誤解を生むような表現が混在していたとしても、多くの人にクリックされ、多くの人に見られていれば、ランキング上位に評価されたという事実だ。

実際、WELQは、直観や感情、不安に訴えかけるようなタイトルやキーワード、検索エンジンに評価されやすいページ内の記述方法など多くの「対策」によってアクセス数を増やし、先述のランキングの循環構造をも意図的に活用して高位のランクを維持し続けていた。

この事件を受けてGoogleのアルゴリズムも改善が進み、特に医療や健康に関わるコンテンツに関しては、Webサイトの運営者が公的機関や医療機関かどうか、企業の場合は規模や歴史も考慮するように変化しているため、現在では無名のWebサイトがいきなり上位を取ることは難しくなっている。

しかし、Googleのアルゴリズムはコンテンツの意味的な「正しさ」を直接判断することはできないため、人の注目を集めるようなタイトルで多くのクリックを集め、正確かどうかにかかわらず多くの「共感」を得られるような情報がランキングの上位に上がりやすいことに変わりはない。逆に正確な情報であっても多くの人の注意を惹くことができずクリックが集められなければ、その情報は下位に埋もれてしまい見られるチャンスを失ってしまう。

WELQほど大規模で悪質な例は多くないものの、私たちが普段何気なく検索し、あまり意識せずに接しているランキング上位のコンテンツには、不正確な情報や虚偽が紛れている可能性が常にあるのだ。

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