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検索エンジンもSNSも…ネットに埋め込まれた「ランキング」の功罪

人気が人気を呼ぶ循環構造の不合理
ニュースサイトに通販サイト、レストランのレビューサイトまで、インターネットのあらゆる場面に現れるランキング。Googleの検索結果やSNSのトレンドも、アルゴリズムによるランキングだと捉えると、インターネットとランキングは切っても切り離せないことが分かる。しかし、この日常に遍在するランキングには、不合理な循環構造がある。人気なものは正しいかどうかに関わらずさらに読まれ、それ以外のコンテンツはどんどん人目に留まらなくなっていくのだ。ランキングとうまく付き合うにはどうすればいいのか、宇田川敦史さんが解説する。

情報を選ぶ手段としてのランキング

私たちのまわりには、大量の情報があふれている。コロナ禍になり、外出が減った代わりにメディアへの接触時間が増えた人も多いだろう。いわゆるDX(デジタル・トランスフォーメーション)が流行語のように推進される中、流通する情報の総量は増加するばかりで、個人が処理できる容量はそのうちごくわずかにすぎない。

このようなメディア環境において、あふれる情報を「選別」する手段の一つが「ランキング」である。例えば音楽のヒットチャートや、書籍のベストセラー、映画の興行収入ランキングなどは、大量にあるコンテンツを「人気」という基準で序列化し、ふるいわけている。

デジタル・メディアにおいては、ランキングの遍在がより顕著だ。企業や公的機関が人手で集計したランキングだけでなく、インターネット上でユーザーが反応した履歴をリアルタイムに収集することで、多様なランキングを機械的に生産できるからだ。ニュースサイトのアクセスランキング、通販サイトの売り上げランキング、SNSのフォロワー数ランキング、レストランのクチコミランキングなど、あらゆる対象において、ユーザーの反応や行動がほとんどリアルタイムにランキング化されている。

ランキングは、情報選別のツールであると同時に、エンタテインメントの対象でもある。例えば、テニスの世界ランキングで誰が何位を取ったとか、サッカーの世界ランキングで日本が何位になったとか、スポーツファンにとってはランキングの動向自体が興味の対象であり、その上下に一喜一憂することも多いだろう。

オリンピックなどはまさに「ランキングの祭典」である。近代オリンピックの熱狂は(その良し悪しは別として)、「メダル」というランキングの可視化装置に支えられてきた。メダルを獲得できるかどうか、さらにはそのメダルの「色」が何であるかは、オリンピックというエンタテインメントの主要な関心事であると同時に、選手にとってみれば死活問題にもなる。

本稿では、このように社会のあらゆる事物を対象に幅広く遍在するランキングと、デジタル・メディアのあり方について考察してみたい。

自己目的化するランキング

先述の通りランキングは、さまざまなメディアを横断する共通の表現形式として、日常生活に浸透し社会に遍在している。筆者は、デジタル・メディアのマーケティングやWebサイトの企画・デザインに長年従事してきたが、その経験則では、たとえば10個の要素をランキング形式(ベスト10)で紹介するページと、まとめ形式(10選)で紹介するページでは(同じ10個の要素を紹介する場合でも)、前者の方がアクセス数が多くシェアもされやすい。

つまり、ランキングという表現形式は、それがランキングであるということ自体によって、「受け手」の注意を引く(=「ウケる」)ような固有のエンタテインメント性を備えているのだ。

この現代新書Webの記事も「アクセスランキング」で序列化されている。サイトの訪問者から見れば、アクセスランキングは、「何を読むか」を決めるための実用的な情報を得られるのと同時に、「今何が読まれているか」を知ること自体が興味の対象でもあるわけだ。

筆者を含む、記事の執筆者にとってもこのランキングは重要だ。なぜなら、ランキングに入ることができれば、より多くの人に読まれるからだ。この自己目的化した倒錯がポイントである。すなわち「より多くの人に読まれれば、ランキングに入ることができる」ことよりも、「ランキングに入ることができれば、より多くの人に読まれる」ことが重要なのだ。

現代新書Webのアクセスランキング(2021年6月20日取得)

アクセスランキングで上位に入れば、より多くの人の目に触れることで実際にその記事のアクセス数はさらに増える。一方、ランク外の記事は読まれるチャンスを失っていく。1位の記事のアクセス数はますます増え、ランク外の記事との格差は拡がるばかりだ。

つまり、人気があるからランキングが上位になる、ことがいつのまにか、ランキングが上位だから人気が増す、という循環を生むことになる。ランキングとは、格差を可視化するだけでなく、格差を再帰的に再生産する装置でもあるのだ。

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