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# パワハラ

「死ぬ気でがんばれよ」部下への熱血指導がパワハラ認定された営業部長の「悪夢」

セクハラ、モラハラ、ジタハラ、パタハラ……。中年男性の人生を破滅に導く罠、それが「無自覚ハラスメント」だ。著書『捨てられる男たち』を出版したジャーナリストの奥田祥子氏は、「部下のために」熱血指導をしたあげく、パワハラで左遷の憂き目にあった中年男性を取材。なぜ彼は、知らぬ間に道を踏み外してしまったのか? その原因を探る。

思いもよらぬ部下の「うつ病」

新型コロナウイルス感染拡大に伴う最初の緊急事態宣言が解除されてから1ヵ月余り過ぎ、近づく「第2波」をまだ多くが予測できずにいた2020年初夏、閑散とした喫茶室で向かい合って座る横川慎太郎さん(仮名、当時49歳)は5、6分の沈黙を経て、うつむき加減だった顔を上げると、こう一気にまくしたてた。

「アイツのためを思って、懸命に指導してきたのに……まさか『パワハラ』だなんて、絶対に納得できません。それに、奴だって嫌な顔ひとつせずにいつも、『はい、わかりました』『ありがとうございます』と答えて、私の意向を快く受け入れていたんです。それなのに、なぜ……。まるで、飼い犬に手を噛まれたような心境です」

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マスクをつけていても顔色が青白く、頬が痩せこけているのがわかる。充血した大きな目がより目立ち、強烈に訴えかけてくる。「アイツ」「奴」といった部下の呼び方は“企業戦士”の厳格な上下関係を彷彿とさせ、部下がお礼の言葉などを口にしたとはいえ、自身の意向を「快く受け入れていた」と決めつけているあたりも気になった。

横川さんは部下に対するその行為が「パワハラ」であることを自覚していない、“無自覚パワハラ”のケースだった。

東京に本社のある大手メーカーに勤める横川さんは数年間、人事部に在籍した以外は、入社以来営業畑ひと筋で歩み、一年前に念願の部長に昇進した。

 

同時期に入社5年目で総務部門から異動してきた27歳の男性社員に目をかけ、本来は先輩社員や管理職でも課長レベルが指導にあたる、営業のノウハウや神髄を直接説いて聞かせたり、自身が現場に出ていた時から贔屓にしてもらってきた取引先を飲み会の席を設けて紹介したりするなど、世話を焼いた。

そのお陰で部下は「メキメキと腕を上げていった」のだと、横川さんは信じて疑わない。

異動から半年過ぎた頃、突如として異変が訪れる。その部下が「うつ病」の診断書を提出し、1ヵ月休職することになったのだ。横川さんにとっては寝耳に水だった。

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