ココ・シャネルは女性服に数々の革命を起こした。コルセットを取り去り、スカートの丈を短くして、ジャージ素材を使った着心地のよい服や、女性が思い切り泳げる水着、空襲中に女性が着の身着のままで外へ出られるパジャマルック、普通の女性でもドレスアップできるリトルブラックドレスを発明。
ハンドバッグに初めてチェーンをつけて女性の両手を解放したし、イミテーションの宝石を使ったコスチュームジュエリーを流行させて、一般の女性がアクセサリーでオシャレをできるようにもした。他にも、合成アルデヒドを配合した「N°5」は香水の大量生産を可能にしたし、史上初の女性版ビジネススーツ「シャネルスーツ」は第二次世界大戦後の女性の社会進出を後押しした。

ファッションで女性の生き方を変え、上流階級のものだったモードを民主化したココ・シャネル。ただ、彼女はもともとそうした思想をもっていたわけではない。貧しい生まれの彼女にとって、ファッションは経済的な自立と自由を手に入れるための手段でしかなかった。

その上昇志向が数々の功績につながり、と同時に、彼女の「黒歴史」をも生み出した。それが明かされているのが、7月23日に公開されるドキュメンタリー『ココ・シャネル 時代と闘った女』だ。

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ファッション専攻の大学生時代からココ・シャネルの伝記を読み、シャネル社のマーケティング部で働いたことのある筆者も、明かされた事実の数々に驚いた。本作のジャン・ロリターノ監督への取材をもとに、シャネルの驚きの黒歴史を紹介したい。

「一切忖度なし」のドキュメンタリー

まず、元社員として筆者がロリターノ監督に確認したかったのは、この映画にはシャネル社から協力を得たかどうかということだ。なぜなら、シャネル社はブランドイメージを非常に大切にしており、例えば、オドレイ・トトゥ主演の『ココ・アヴァン・シャネル』(2009)にも衣装協力をしなかったぐらいだ。

社則のひとつに「マドモワゼルの世界観を守る」というのがあり(正確な表現は忘れたが、そんな意味の言葉があった)、パリ本社の社員はココ・シャネルのことを「マドモワゼル」と未だに呼ぶ。高級ブランドにとってブランドイメージは生命線だ。だから元社員として、シャネルの黒歴史とも呼べる内容にシャネル社が絡んでいたのか、どうしても監督に聞きたかった。

「私はファッションがテーマの番組をテレビで制作してきたので、メゾンの協力や許可をとりつけることの難しさを知っています。今回プロデューサーと決めたことは、一切メゾンに協力や許可をとることはしない、ということでした。そもそも、ドキュメンタリーだから必要ないと思ったんです。ただ、弁護士と相談して法律に基づき制作をしました」(ロリターノ監督、以下同)

シャネル社が絡んでいたら、このような映画は絶対に制作できなかっただろう。