「解体」のシナリオ
先日の株主総会に戻ろう。大きな焦点となったのは、冒頭で永山氏も触れた外部調査報告書だ。
車谷氏ら経営陣が経産省と通じ、昨年の株主総会で役員選任に関する株主提案を退けようとしたこと、のみならず「丘の上」すなわち官邸ないし菅総理とも連携を図ろうとしたことが暴かれ、衝撃をもたらした。
永山氏が「承服できない」と憤ったのは、この調査報告書が事実上、永山氏に対する責任追求の契機となり道具となったことについてだろう。
これまで取締役会のトップを務めた永山氏からすれば、「こんな大それた策謀に、あなたはなぜ気づかなかったのか」と責められているに等しいのだ。
永山氏は、むしろ「なぜ車谷の独断専行を止めた自分が、切られなければならないのか」という思いかもしれない。

だがハゲタカたちは、永山氏も車谷氏も同じちっぽけなネズミとしか見ていない。そもそもこの報告書自体、アクティビスト側のお膳立てでまとめられたものだ。
「これで東芝にとっては、相当に厳しい状況になった。今回の総会で、社長を選任する指名委員会委員のうち、過半数をアクティビスト系の社外取締役が握りました。
会長の綱川智氏が、CEOと永山氏のあとの取締役会議長を兼務することになりましたが、これはあくまで暫定措置です。
これから臨時株主総会が開かれて議長、そして社長が選び直されることになりますが、アクティビストの思惑を汲む人物が選ばれる可能性が高い。
経産省からすれば、気が気ではないでしょう。これを契機として、ついに『東芝解体』が始まるかもしれないわけですから」(経済ジャーナリストの磯山友幸氏)