'15年4月に約2300億円もの粉飾決算が発覚してから、東芝が漂流を続けているのは周知の通り。
だが、いま現在の財務だけ見れば、東芝は「5年前には純資産がマイナス2757億円まで沈み、息も絶え絶えだったのに、今では1兆3045億円まで回復した。外形的にはピカピカの超優良企業」(経産省キャリア)である。
'17年には子会社の原発メーカー・ウェスチングハウスの不振で二期にまたがる債務超過となり、「破綻確実」とまで言われたのに、わずか数年で復活を遂げたのか。
もちろん違う。瀕死の東芝を今日まで生きながらえさせているのは、他でもないハゲタカたちのカネなのだ。

「破綻か会社分割か、という瀬戸際で、東芝はどちらも嫌がった。上場維持のために虎の子の半導体部門を売ろうとしたものの、その交渉も難航した。そこへ'17年末、ゴールドマン・サックスが6000億円の増資を提案したら、見事に食いついたのです。
このプランは、よりによって最もコントロールが利かない海外のアクティビストのカネを、莫大な額注入することを意味していた。提案したゴールドマン・サックスの側も『こんな奇策に乗るとは、東芝は本気か』と裏で笑っていました」(全国紙経済部デスク)
わずか3週間で6000億円を集めたこのディールは、「芸術」とも「曲芸」とも評された。とにもかくにも、貧血の巨体にカネを注ぎ込まれた東芝は、確かに息を吹き返したように見えた。
だが、死にかけの会社をタダで助ける物好きなどいない。増資に乗ったシンガポールのエフィッシモや3D、香港のアーガイルといった海外ファンドは、名うてのハゲタカたちだった。彼らはそれ以来、物言う大株主として東芝の首根っこを掴んでいる、というわけだ。