成長前提の社会保障はもう持たない―マルサス型世界の到来に備えよ

本当の持続可能経済とは何か

経済成長が普遍的になるのは産業革命以降

現在我々は、日本や米国などのGDP成長率が○○%という言葉をよくつかう。そして、パンデミックの影響で成長率がマイナスになれば危機だと感じる。

要するに「経済は成長してあたり前だ」というのが「社会通念」になっているのだ。しかしこの「社会通念」がほんとに正しいのかどうかは大いに検討の余地があると考える。

by Gettyimages

例えば、米国の格付け会社S&Pは「2021年の中国の実質国内総生産(GDP)の成長率は、8.3%」と予想している。この数字を丸めて8%ちょうどで計算してみると(小数点以下切り捨て)

1年目100%
2年目108%
3年目116%
……
8年目171%
9年目185%
10年目199%

となる。

つまり、8%成長を10年続ければ経済規模はほぼ倍になるのである。そしてその後の10年も8%成長を続けると、「2倍」がさらに2倍になるのだから4倍である。さらにもう10年(全部で30年)8%成長を続けると、「4倍」の2倍だから8倍にもなる。

中国経済が米国経済を規模で追い抜くという予測の根拠はこのような単純計算によるものだが、30年後の中国経済が現在の8倍になっていると考える読者はいないであろう。3月29日公開の「『金の卵を産むガチョウ』を絞め殺す習近平政権に未来は無い」など一連の記事で述べた状況も考えあわせれば、現在の中国にとって「8%成長」は持続不可能だといえると思う。

それでは先進国の間で一般的な3%成長の場合はどうであろうか?同様に計算すると10年でおおよそ1.3倍になる。

こちらはたいしたことがないようにも思えるが、10年で1.3倍のペースで成長を続けると100年でおおよそ14倍になる計算だ。

投資の神様バフエットが、このような「複利効果」利用して大成功したことは有名であり、拙著「勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす」の第6章「毎日コツコツでも、5年ごとの複利効果で驚くほどの資産に!」で複利効果について解説している。

バフエット流の資産運用において複利効果によって資産が膨れ上がることは好ましい。だが、一国の経済がたとえ3%であっても、長期にわたって「成長を持続」することが可能かどうかは大いに疑問である。

 

そもそも「経済成長」なる概念が一般的になったのは1800年頃の産業革命以降のことと言ってよい。

それまでは、たとえ「経済成長」があったとしても、我々がほとんど体感できない「カメの歩み」のようなものであったのだ。

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