練習時間が終わったら敬語も使わない

このときエブリン選手の周辺にあったのは、指導者と選手という関係性はあくまでもコートの中だけ。一歩コートから離れればひとりの人間同士として対等な関係を持っていた。ときにスポーツ指導の場は、「練習時間」という制限の中でも外でも指導者が指導する側を「支配」する図が出来上がる。しかしエブリン選手の環境は、全国大会優勝を重ねている強豪校ながら、精神的に追い詰める厳しさとは一線を画していた。厳しい練習に一度は挫けそうになったが、それでも食らいつけたのは、スポーツ虐待とはかけ離れた環境でバスケができたからではないだろうか。

「コートの中では厳しくて、練習は理不尽なこといっぱい言われるんですよ。例えば『ドリブル一生つかないでプレーしなさい』とか。そんなの無理って思うじゃないですか(笑)。でも上手くなるために計算して教えてくれているところもあるし、コート外ではみんなのおじいちゃんみたいな。さっきまで怒っていたのにコートを離れた途端優しくなります。そこがみんなついていったポイントかなって思います。コートの外ではみんな井上監督に敬語は使わないし、いじったりもするんですよ。Wリーグで桜花学園出身の選手は一番多いです。それが強さの証拠だなって」

井上監督を元桜花学園卒業のトヨタ自動車アンテロ―ブスメンバーが囲んで。この雰囲気だけでも関係性がよくわかる 写真提供/トヨタ自動車アンテロープス

桜花学園卒業後、2014年にアイシン・エイ・ダブリュ(現・アイシン)に入社、2017年にトヨタ自動車アンテロープスに移籍をした。現在Wリーグで活躍するエブリン選手の周りにも桜花学園の精神は強く残る。
「桜花学園の選手は、負けず嫌い。バスケ以外のゲームでも白熱して言い合いになるんじゃないかって時もあります。明るい人、内気な人、いろんな人がいるけど優勝したいっていう目標があるので、そこに向かっていくための言い合いはオッケーだし、基本的に目指すところは一緒なんですよ」