スポーツの場でも少なくない「犯罪」

夏休み。コロナの緊急事態宣言で縮小傾向が多いかもしれないが、部活や習い事でスポーツに打ち込む人も多いだろう。スポーツに打ち込むのは素晴らしいことだが、スポーツの現場でも「犯罪」になるような指導や事件・事故は少なくない。

例えば、体罰やしごきで傷害などを負った場合や、強制わいせつ、事故などで死傷した業務上過失致死罪などがある。かつて、関西の高校バスケットボール部で、監督の体罰に苦しんだキャプテンの男子が、自死した痛ましい事件があった。被告となった元指導者には、懲役1年、執行猶予3年の判決が出された。

このようなことは本来あってはならないし、根絶されることが最も望まれる。現実をみると、日本スポーツ協会の「スポーツにおける暴力行為等相談窓口」に寄せられる相談件数は毎年増加傾向にあるという。しかし窓口すらなかった時代が長かったことを考えれば、窓口があることによって問題を明るみにできる環境になったともいえる。もししごきや体罰で何か被害を受けた場合、法はきちんと守ってくれる。警察に被害届を出して受理された場合、刑事裁判への第一歩がスタートするのだ。

しかし、被害届が受理されても、裁判となるとは限らない。不起訴となって訴訟見送りになることもあるからだ。その場合、被害を受けた側がもう一つとることができる手段が、民事裁判である。
民事裁判は、刑事裁判のように逮捕・勾留されることはないが、その責任の所在を明らかにし、責任の追及を行うことができる。代表的なものでは離婚訴訟、借金返済、人身損傷による損害賠償などがある。法のもとで「ではここで生じた問題はどちらが償うべきなのか」をはっきりさせようということだともいえる。

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「しごきがおかしい」と訴えたら…

では、民事裁判では「白黒はっきりさせる」ことが一番の目標なのだろうか。その本当の意味を考えさせてくれるのが、『まんが こども六法 開廷! こども裁判』に掲載されている漫画の第6話「裁判では勝つか負けるかしかないの?」である。
『まんが こども六法 開廷! こども裁判』は山崎聡一郎さんのベストセラー『こども六法』(弘文堂)を原案とし、「裁判」をテーマにした漫画を通じて、いじめや虐待などこどもたちが関係する法律について詳しく解説する一冊だ。

今回裁判で原告と被告となるのは、同じサッカークラブの5年生と6年生。地元の大会でもトップクラスの実力で、何年も続く伝統あるクラブだという。このサッカークラブで、5年生は炎天下に休憩も取らせない6年生のしごき的練習方法がおかしいと訴えたのだ。そのきっかけとなったのは、5年生の中で一番サッカーが上手で熱心な南くんが熱中症で倒れて病院送りになったことだった。

(c)伊藤みんご・山崎聡一郎『まんが こども六法 開廷! こども裁判』(講談社)より

「6年生たちにおれたち5年生は暴力に近いしごきを受けているんです」と語る5年生に、6年生のキャプテンは言う。

うちのサッカークラブが強いのはだれのおかげだ? 代々先輩たちが後輩たちにそうやって指導してくれたおかげだろうが。いいか、おれたちだって5年のときは当時の6年に相当しごかれたんだよ。おれたちも死ぬほどつらい思いしたけどたえぬいたんだ! お前らも5年のうちは同じようにたえるべきだろ!

そこに原告側の証人が出てくることに。なんと熱中症で病院に長くいたその南くんだった。6年生がしまったという顔をする中、南くんは、周囲が驚く証言をする。そして、「問題を解決する方法」は「どちらが悪いのかを明確にすること」だけではないことが明らかになるのだ。

漫画を担当した伊藤みんごさんは言う。
「刑事裁判は罪を犯した人を国が裁くものですが、民事裁判はお互いの主張を聞いた上で解決する。裁判はズバッと白黒つけて解決するイメージがありますが、勝訴でも敗訴でもない、お互いに理解して納得し合う『和解』という道もあるんだよ、ということも伝えたかった。昔、自分が小学生の時に入ってたバドミントンクラブで先輩後輩がギクシャクしていたことを思い出して描きました」

今回の物語で教えてくれるのは、「和解という選択肢」の存在についてだけではない。たとえそれが理不尽だったり時代遅れだったとしても、組織のルールややり方を変えることは、時にそれまでの組織を否定されると思われてしまいうる現状。そして現実を見てそれを変える勇気を持てば、多くの人が笑顔になれる可能性。法という切り口で見つめなおすことで、問題点の解決策が見えてくることも、確実にあるのだ。