短期間の付き合いが心地よかった

そんな発達障害であることを認識し、病院でも診断された私がたった一人で世界一周するなんて本当に大丈夫なのか? 最初は不安でいっぱいだった。

異国では誰もが初対面だ。日本では上手くいかなかった対人コミュニケーションだが、海外では違う。旅の道中は誰もが短期間の付き合いでOKだ。スナフキンのように自由気ままに放浪し、明日は今日とまた違う土地に移動できる気楽さが何より心地よく、息苦しかった日本での生活から解放されて伸び伸びと過ごすことができた。

そう、世界は広い。色んな人がいて当たり前だし、誰も自分を変な子だな……と思ってヒソヒソ話したりしない。そんな解放的な旅の道中で、私は横断歩道がなかなか渡れないという壁にぶち当たった

発達障害の一つであるADHDには注意欠如という特性があり、複雑な動きを見せる物が周りに蠢いているとどう動けばいいのか分からずにパニックになってしまう。

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エジプトに入国し、最大の都市であるカイロに到着すると驚いたことに、基本的に大きな交差点でも信号がなかった。たまに信号がある場所もあったが、誰一人信号を守らないので道路はすっちゃかめっちゃかだ。

どの車も人が歩行しているところに爆速で突っ込んでくる。え? こんな危険な道路、どうやって渡るの? 渡り出したら1秒であの世行きな予感……巨大な交差点を呆然と眺めながら待つこと10分。爆速する車の合間をスイスイ縫うようにしてエジプト人たちが横断していく。

カイロで横断歩道を渡ろうとしているところ。この状態で毎回10分ほど渡れるチャンスを伺う。写真提供/歩りえこ

しかも、エジプト人は太っている人が多く、100kgはありそうな巨漢ばかりだ。私は彼らの体重の半分くらいだからもっと身軽に動けるはずだ。よし、勇気を出して渡ろう!

私は大縄跳びに入るような感覚でタイミングを見計らいながら、えいっ!と道路に飛び出したが、あちこちから爆走してくる車に頭がパニック状態

すると……何者かが私の手を引っ張ってスイスイと横断させてくれた。

カイロのバスターミナルは混沌としている。行き先などが複雑なので列車移動の方がおすすめ。写真提供/歩りえこ