「まさか自分が? なぜ? どこで? 1年半こんなにも気を付けてきたのに……」

及川夕子さんは医療系の記事を数多く執筆しているライターで、仕事柄コロナ禍でも感染対策は誰よりも万全に行っていた。ところが先日、新型コロナウイルスに感染。数日後には及川さんの夫も感染し、それぞれホテルと自宅で療養生活を送ることになった。

感染療養中、「明日には、もう少し良くなっているはず…という希望が、何度も打ち砕かれた」という。取材でさんざ新型コロナウイルス感染症について寄稿してきたが、やはり実際なってみると、想像をはるかに超えつらいことも多かったと振り返る。

神奈川県のホテル療養施設に一時的に入った及川さん。誰とも接触せず部屋まで行ける動線が作られていました。写真/及川夕子

前編では発熱、コロナ陽性でホテル療養になったところまでをお伝えした。
後編では、コロナ感染者のホテル療養の実態と体調の変化について緊急寄稿してもらった。

医療ライターの新型コロナ感染の経緯を時系列でつづった
【前編】「気を付けていたのに、なぜ?」医療ライターが感染し実感したコロナの恐怖こちらから
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味覚異常に体温の急変動。高熱が下がらない

【7月3日~5日(ホテル療養1~3日目)】

発症当初は、熱があっても解熱剤を飲めば、なんとか動ける状態でした。ホテル療養1日目(発症3日目)はオンラインヨガを受講、2、3日目は友人とテレビ電話でおしゃべりする余裕もありました。

でも、この頃から水を飲むと苦味しか感じなくなり、お弁当も味が変でした。コーヒーは全く受け付けなくなり、おかずの揚げ物についていたソースがとにかくしょっぱくて、甘さも酸っぱさも感じませんでした。

療養中に苦しめられたのは、味覚異常のほかに、体温のめまぐるしい変化です。ほぼ1日3回、フルに解熱剤を服用し、平熱に下がることもありました。でも、「この調子なら明日はもう少し楽かな」と思っていると高熱が出るといった具合で、良くなったり悪くなったりの繰り返し。これが一番つらかったです。

【7月6~7日(ホテル療養4~5日目)】

療養6日目、7日目になると、解熱剤を飲んでも熱がなかなか下がらなくなり、一日中横になって過ごしました。身体中が熱く、ベッドから起き上がるエネルギーが全く湧いてきません。夜中には熱が39度台に

怖いほど上がっていく熱。解熱剤を飲んでも下がらないときはめちゃくちゃ怖かった。(写真はイメージです)photo/Getty Images

食欲も落ちていく一方で、口に入るのは、自宅から持参したフルーツとこんにゃくゼリーくらい。ホテル療養で配られるのは、1日3食のお弁当のほかにペットボトルの水またはお茶、ドリップコーヒーやお茶のティーバックのみです。相変わらず口の中が苦く、水すら口に入れたくない状態でした。「スポーツドリンクなら飲めたかも、持参すればよかった」と悔やまれました。

連日解熱剤を服用しているためか、胃がひどくもたれるようになりました。胃の痛みに耐えられず、ネットで胃薬と栄養ドリンクを注文(市販薬の購入は許可されていました)。もっと早くに頼んでおけばよかったと思いました。

元気だったらおいしそうなお弁当なのだが、肉多めで手が伸びず。係の手書きのメッセージが温かく励みになりました 写真/及川夕子
朝の食事はこんな感じ。パンも野菜も喉が通らず、バナナを少しずつ食べるのが精いっぱいでした。写真/及川夕子

また、ホテルには、氷枕がありません。とにかく熱を冷まそうと、ホテルの部屋の冷蔵庫で冷やしたペットボトルを、首筋や脇の下にあてると、少し気分が良くなりました。

振り返ればこの2日間が、最もつらい時期でした。「こうやってコロナは生きる気力と体力を奪っていくのだな」、「このまま味覚が一生戻らなかったらどうしよう」、「70代、80代だったら負けていたかもしれない」という考えが何度も浮かんできました。この頃が最も体力、気力、食欲を奪われ、弱り切っていたと思います。