海上自衛隊は安倍前首相が掲げた「自由で開かれたインド太平洋」を受けて、2018年度から毎年度、護衛艦2、3隻からなるインド太平洋方面派遣訓練部隊を編成し、「いずも」と「かが」を交互にインド洋と南シナ海に送り込んでいる。

対潜水艦戦に特化した2隻を派遣することで中国の海南島にある海軍基地に出入りする中国潜水艦を牽制する狙いがある。空母化により、その効果が半減することになれば、対中戦略に影響する。

政治判断によって兵器導入が決まったのは、空母化ばかりではない。昨年12月、菅義偉政権は配備を断念した弾道ミサイル迎撃システムのイージス・アショア代替策としてイージス・システム搭載艦2隻の建造を閣議決定した。
地上に置くべき大型レーダーを搭載することから船体が大型化し、建造費だけで2隻で5000億円を越える。完成後の維持・管理に4000億円もかかる金食い虫になることが確定している。
17機導入されるオスプレイも自衛隊が求めなかった政治案件である。沖縄の普天間基地に米海兵隊がオスプレイ配備を進めるにあたり、自衛隊が身をもって安全性を示すべきだとの判断から安倍政権で導入を決めた。
わが国は太平洋戦争で軍部が暴走した反省から、政治が軍事を統制するシビリアン・コントロールを採用している。だが、安倍政権以降、政治家による思いつきのような兵器導入が目立つ。シビリアン・コントロールのはき違えによって、日本の平和と安全が脅かされる事態は本末転倒というほかない。