宇宙は「どんな形」をしているのか?

現代科学の必須概念、「多様体」とは
小笠 英志 プロフィール

3次元 〜球と球をぴったり貼り合わせる?〜

先ほどの話(1つ低い次元、2次元での類推)の中には、

「閉円板2個をそれぞれの境界の円周でぴったり貼り合わせる」

という操作があり、この操作が重要でした。この操作によって、球面という一解が得られました。上記の「 」内でしたことの1つ次元を上げたことを本当にできるかどうかを気にせずに、とりあえず言ってみましょう。

「閉球体2個をそれぞれの境界の球面でぴったり貼り合わせる(境界のみぴったり貼り合わす。境界同士はすべてぴったり。中身は相手とふれあわない)」 ですね。これが、実はできます。それを今から説明します。そして、そうやって得られたものが、前述した問への一解です。 図5のような"操作"が本当にできるということです。

【図】閉球体2個をそれぞれの境界の球面でぴったり貼り合わせる図5閉球体2個をそれぞれの境界の球面でぴったり貼り合わせる 

2個の閉球体を気合で貼り合わせるとは、図6のような "気持ち"です。念じて幻視してください。今から、もう少し詳しく説明しますが、まずは、図6をぼぅっと空想するところから始めてください。図6の下図はこのような性質をもちます。

【図】6図6

片方の閉球体の中を進んでいくと、球面を越えてもう片方の閉球体に移ります(図7)。

【図】7図7

上記の球面の場合の説明から類推してください。たしかに、みなさんの頭の中では、閉球体2個が境界同士でぴったり貼れていて、しかも境界だけで貼れていますね。しかし、これは3次元空間の中ではできません。されど、数学的に正しいことです。球面の場合からの類推で3次元球面という名がついています。これを3次元球面というので、今まで球面といっていたものは2次元球面ともいいます。  

これだと、自分のまわりはいつも自分のいる位置を中心とした開球体とみなせます。言い換えると、部分的に見たら小さい3次元空間です。また、どの点から引き始めたどんな曲線でも、いくらでもこの図形(3次元球面)の中でどんどん伸ばすことができます。しかし3次元空間ではありません。大きさも無限ではなくて有限です。

SF的な法螺(ほら)話ですが、宇宙空間をどんどんまっすぐに宇宙船で進んだら、もといた場所に戻ってくるかもしれないというイメージです。

まずは、なんとなくでかまわないので、空想してください。雰囲気だけでもよいので、3次元球面というものが存在するような気がしてきましたか。確かに存在しますよ。さらに詳しく説明することもできますが、それはまたの機会にしましょう。

さて、2次元球面は3次元空間の中に置けました。ここで、「宇宙が3次元球面としたら、2次元球面の場合からの類推で、3次元球面(ここでは宇宙のこと)はどこかの中に置けるのか?」と考えるかもしれません。

まず、2次元球面の場合をもう一度考えてみましょう。

2次元球面上の人が上下を見ないで動いていれば、自分のまわりが大体平面のような感じだということ以外、普段は気にしないですね。2次元球面が3次元空間の中にあるかないかは気になりませんね。陸上や海上で平面方向の、たて、よこの移動だけ を考えるとしましょう。つまり、高さ方向を考えないということです。

そして2次元球面は曲がっているので、平面といっても少し曲がっていますが、自分のまわりの小さいところだけ見ていると普段はあまり気になりません。そのように、平面方向の移動を考えるには、2次元球面全体として3次元空間にあるということは考えなくても、まあ困らないですね。  

3次元球面の場合も、その中にいる我々は、自分のまわりがだいたい小さい3次元空間のような感じだということ以外は、普段は気にしないでいいのかもしれません。また宇宙の観測をするにしても、そのような3次元の中のことだけで話を進めていけます。

その意味では、3次元球面全体がどこかの中にあるかどうかを思案する必要はありません。実際、3次元球面内の現象を考えるとき、そうした3次元ぶんだけの情報を考えておけばじゅうぶん足りる、ということもあります。

しかし、2次元球面が3次元空間内に置けるのなら、3次元球面は、3次元空間より1つ次元の高い4次元空間とでもいうものの中に置こうと思えば置けるのではないか、というのも自然な疑問でしょう。実際、そのようなことができます。 そうやって、3次元空間より1つ次元の高い4次元空間に「置いて」3次元球面を想像した方が、イメージしやすい人も多いでしょう。また、その「置き方」を研究するのも大事なテーマといえます。

さて、ここでいったん、冒頭の2つの疑問を正確に言い換えると次のような疑問になります。

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/