「死ねと言ったらいけないんだよ~」

そんなことは誰でもわかっているはず。しかし実際は、「死ね」「死んじまえ」とういう言葉は、SNSに溢れている。そんな中でこども達はどうやって「死ねといったらいけないこと」を実感することができるのだろうか。

そんな、「なんでダメなんだろう」を当事者として感じさせてくれるのが、『まんが こども六法 開廷! こども裁判』である。本書は山崎聡一郎さんのベストセラー『こども六法』(弘文堂)を原案とし、「裁判」をテーマにした漫画を通じて、いじめや虐待などこどもたちが関係する法律について詳しく解説する一冊だ。小山田圭吾氏の「いじめ」は度を越えていると言われているが、「度」はどこにあるのかの線引きは難しい。だからこそ、いじめそのものがなぜいけないことなのかを「当事者」として感じることが重要になる。

まんが こども六法 開廷! こども裁判』発売を記念し、マンガ部分の無料試し読みとともに一冊ができるまでをお届けする。

-AD-

法律はみんなを守るためにある

こども六法』(弘文堂)は2019年に山崎聡一郎さんが自身のいじめ体験を踏まえ「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに生み出した法律解説書だ。小川凛一さんが企画、砂田智香さんがデザインとイラストを考案し、伊藤ハムスターさんのやわらかいイラストと共に六法から抜粋してわかりやすく解説した本書は、2020年児童書部門ベストセラー1位(日販・トーハン調べ)に輝き、2021年7月までの累計売上が69万部の大ヒットとなった。

『こども六法』の帯にはこう書かれている。

「きみを強くする法律の本 
いじめ、虐待に悩んでいるきみへ 
法律はみんなを守るためにある。知っていれば大人に悩みを伝えて解決してもらうのに役立つよ!」

『こども六法』の「著者紹介」によると、山崎さんは小学5年から6年にかけて左手首を骨折するほどの暴力を伴ういじめを受け、中学受験を決意。しかし私立中学に入学すると、部活動の揉め事の中で後輩を大勢で心理的に追い詰めてしまい、指導の対象となったことがあった。いじめ被害の苦痛を知る自身が気づかぬうちにいじめ加害者となってしまった、その経験に悩み大きなショックを受け、いじめ問題の複雑性を感じて本書を生み出したのだ。

被害者も加害者になりうる。そして加害者もいろんな要因がある――。それを前提にして「法律のこと」を丁寧に伝えたのだ。

当事者意識を「具体的な物語」で伝える

そんないじめ問題の複雑さを、「コミカライズ」によって「当事者意識」を持つことができるように伝えようとしたのが『まんが こども六法 開廷! こども裁判』だ。伊藤みんごさんのマンガと、山崎さんご本人のタッグにより実現した一冊だ。様々な法律の解説の間にマンガが挟まれていくのだが、その設定が実際にこどもたちに起こりうる問題に対し、「こども裁判」によって適切な解決を考えていくというものだ。

漫画を担当した伊藤みんごさんは言う
「最初に企画のお話を聞いた時は、『なんて難しそうな企画だろう』だという印象がありました。ただ実際に『こども六法』を読んでみたら、これは漫画で伝えられることがあるかもな、と思ったんです。もちろん『こども六法』を読むだけでも、イラストがあるので子供が想像力を働かせられると思います。でも、漫画の中で当事者としてキャラクターが苦しんだり、法律に助けてもらうシーンを見ることで、子供たちがより『自分事』として共感できるのでは、具体的に法律というものをイメージできるのでは、と思いました。漫画にそういう意義があるなら、やってみたいと思いました。

どの法律を取り上げるかがまずあって、あとはどんな話だったらそれが伝えられるか、というのを考えました。子供に向けて、しっかり真っすぐ向き合って届けたいと思って描きました」

たとえばマンガ第1話の「言葉の暴力」をテーマにした話では、いつも主人公の女の子・結城に対して「死んでくれない?」「死ね」と言う女の子が「被告人」となり裁かれる。その「裁判」で「死ね」と言ってきた女の子は言う。

「「死んでほしい」とかちょっと冗談でいっただけじゃん?
だいたいなぐったりケガさせたわけでもないのに『罪』って…
結城さん大げさじゃないの――?」

しかし、「冗談で」言っていた言葉は、結城に毎日グサリグサリと刺さっていた。結果として、結城が「その経緯」を記していた日記が、結城を救うことになる。

これを「冗談」と言われても… (c)伊藤みんご・山崎総一郎『まんが こども六法 開廷!!こども裁判』/講談社

伊藤みんごさんは言う。「『こども六法』を初めて読んだ時に『悪口も犯罪になる』ということが書いてあって、それが非常に印象的でした。だからこれを伝える話を1話に持ってきたいと思っていました。
『いじめは犯罪になることがある』そういった知識を持つことで自分を守れることがあるんじゃないか、この思想は原作でも大事にしているように感じたので、今悩んでいる子にしっかり届けたいという気持ちで描いていました」

「今悩んでいる子」とは「言われている子」だけとは限らない。思わず言ってしまう子も、何かに満たされていなかったり、困っていたりすることもある。だからこそ、被害者にはされていることが暴力であること、加害者にはしていることが暴力であり犯罪になりうることを、きちんと伝える必要があるのだ。