東京から京都に移り住んだジャーナリストの秋尾沙戸子さんと、秋尾さんを京都の師とあおぐ漫画家の東村アキコさんの連載「アキオとアキコの京都女磨き」、今回のテーマは「七夕伝説」

一般的に「七夕」といえば7月7日のイメージがありますが、実は京都では旧暦にあわせ8月にも楽しまれているそう! そして、この行事を聞いて思い浮かべるのが「織姫と彦星」の物語。そもそも2人が年に一度しか出会えないとされているのはなぜ? 大人になってわかった意外な伝説の内容、現代まで京都に受け継がれている「七夕行事の楽しみ方」とは?

記事最後に掲載の漫画家・東村アキコさん本連載書き下ろしイラストも必見!

連載「アキオとアキコの京都女磨き」ほかの記事はこちら

京都で見かけた8月の七夕、その内容とは

「京の七夕」――。京都に来て初めての夏、大きくそう書かれたポスターを見て、はたと首を傾げた。京都の七夕は8月なの? 雅な何かに出会えるのかしら。短冊に願い事を書いて笹にぶらさげたのは遠い昔。大人はどうやって過ごすのだろうか。

私が初めて訪れた2013年当時、「京の七夕」とうたったイベント会場は堀川と鴨川の2ヵ所。(その後、イベントはさらに進化し、2019年の会場は京都府下5エリアにまで増えている)。まず、堀川の会場に行ってみれば、ドーム型の天井が設けられ、LEDを用いた天の川が映し出されていた。なるほど、若いカップルや子どもには受けそうな試みだと感心した。和服好きの私の目を引いたのは「光の友禅流し」。そもそも堀川は昔、友禅染の職人たちが、染めた布を広げた川。その堀川に、やはり光を使って友禅の文様を浮かびあがらせていたのだった。

編集部注:2021年度の京の七夕は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、オンラインを中心に開催中。詳細は京の七夕HPをご覧ください。

写真提供:京の七夕実行委員会事務局

他方、鴨川のイベント会場に行ってみると、なるほど、真っ暗な川べりに大きな竹カゴがそこかしこに置かれて、幻想的な雰囲気をかもしだしている。中にはLEDライトが置かれ、風鈴が吊るされており、これを「風鈴灯」と呼ぶことを後から知った。

実は、会場へ行くと「手提げ提灯」がもらえるという案内に、私の物欲センサーが反応してやってきたのだった。「手提げ提灯」がもらえるなんて、さすが京都。情緒的ではないか。その中にランプを入れれば自宅でもインテリアライトとして使えるかもしれない。しかし、実際のところ、頂けた「手提げ提灯」は手のひらで握れるほどの可愛らしいサイズの竹カゴで、中にはランプではなく鈴が入っていた。通常の提灯ほどの大きさを想像し、照明器具に仕立てようとした私の目論見は、あっけなく崩れたのだった。

-AD-

しかしながら、夜の鴨川散歩は実に気持ちよかった。じとっと汗がにじむ日中と違って、皮膚をなでる夜風は秋の訪れを感じさせた。見上げた夜空には星がまたたき、久しぶりに「七夕伝説」を思い出した。天の川を隔てた彦星と織姫が1年に1度出会うという壮大なラブストーリーのことなんて、もう何十年も忘れていたのだ。

考えてみれば、毎年7月7日は梅雨空で、星が見える夜は少ない。8月だからこそ空を見上げて七夕伝説を思い起こさせるのである。鴨川をわたる秋風のふとした淋しさは、恋物語をいっそうせつなく魅惑的に仕上げてくれそうだ。

そもそも、天の川の両岸にある織女星と牽牛星が年に1度だけ会えるという「星伝説」とはどんな話だったのか――。