近年、フェミニズムに対する関心が高まり、関連書籍の刊行も盛り上がりをみせている。そんな状況のなか、『なんて素敵にジャパネスク』などのヒット作で知られる人気少女小説家の氷室冴子さん(1957-2008)が90年代に発表したフェミニズムエッセイ『いっぱしの女』が、ちくま文庫から復刊を遂げた。

〈やっぱり、ああいう小説は処女でなきゃ書けないんでしょ〉

『いっぱしの女』は、氷室さんの衝撃的なセクシュアルハラスメントの回想から始まる。本書で語られるのは、女性であるがゆえに味わった悔しさや怒り、独身女に対する世間の偏見や風当たり、結婚をめぐる母と娘の確執、そして女性同士の連帯……。鋭い観察眼と軽やかな言葉でつづられたエッセイ集は、30年前の本でありながら古びることなく、鮮烈かつアクチュアルな問いを私たちに投げかけてくる。

氷室さんの痛切な発信から30年を経ても、女性が抱える生きづらさ、もどかしさの根底にあるものはいまだ変わらない。『いっぱしの女』をいま出し直す意味や、色褪せぬ魅力について、新版の編集を担当する砂金有美さんに語ってもらった。

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『82年生まれ、キム・ジヨン』のヒットも復刊の後押しに

『いっぱしの女』の単行本が刊行されたのは1992年。その後、1995年に文庫化されたものの、2000年頃から品切れとなっていたという。それがなぜ2021年に入り、復刊されることになったのだろうか。

きっかけになったのはSNSでした。今年に入ってからTwitter上でたびたび『いっぱしの女』が話題になり、復刊してほしいと声をあげてくれた方たちがいたんです。一つ一つのツイートは爆発的なバズとまではいかず、規模としては小さめでした。けれども、復刊を望む声が2011年頃まで遡れたことなどを含め、数だけでは測れないツイートの重みが、企画を後押ししてくれました」(砂金さん、以下同)

砂金さんは氷室冴子さんの名前こそ知っていたものの、『いっぱしの女』を初めて手にとったのは、SNSの声を受けてのことだった。

「読んでみたらめちゃくちゃ面白い本で、読み手の気持ちを喚起させるような言葉がたくさん詰まっていた。私は1990年生まれですが、とても30年前の本、30年前の声とは思えず、まるで自分の友達や同世代の人と同じような悩みや苦しみが書かれていて、衝撃を受けました。SNSで皆さんがおっしゃっていることは本当だ、とにかくこの本をもう一度世に出したいと、突き動かされるように企画会議に持っていきました」

そして無事企画は通り、『新版 いっぱしの女』の刊行が決定する。企画が通った背景には、チョ・ナムジュの『82年生まれ、キム・ジヨン』をはじめ、筑摩書房がこれまでに刊行したフェミニズム的なメッセージを強く持った書籍のビジネス的な成功も大きかったという。復刊を願う読者の声と、それに呼応した編集者、そしてフェミニズムをめぐる時代の流れが結びつき、『いっぱしの女』の再刊が実現したのだった。