香港を「習近平主席のもの」にするシナリオが、実現に近づいている現実

崩れゆく「一国二制度」(後編)
「香港は誰のものか?」――急速に変わりゆく香港の変遷を追った2回シリーズ。後半は、習近平政権が目指す「愛国香港」と、それに反対する香港の民主派の人々の確執についてレポートする。

前半はこちら)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/85118

香港・マカオを本土に一体化

習近平政権の2期目5年が始動して半年余り経った2018年10月23日朝9時半、習近平主席の姿は、北京から2300kmも南に下った広東省珠海の広州湾に面した海岸沿いの橋の上にあった。中国では「秋高気爽」(チウガオチーシュアン)と形容する秋晴れのこの日、待望の「香港・珠海・マカオ橋」(Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge 港珠澳大橋)の開通式を迎えたのだ。

Gettyimages
 

港珠澳大橋は香港、珠海、マカオを結ぶ全長55kmに及ぶ世界最長の海上橋である。2009年12月、総工費1200億元(約2兆400億円)をかけて建設が始まり、ついに開通にこぎつけたのだ。120年の使用に耐えられ、中国大陸側の珠海市が管理する。

午前10時、習近平主席が「港珠澳大橋は正式に開通した!」と宣言。後ろには、韓正副首相(党常務委員)、劉鶴副首相(党中央政治局委員)、丁薛祥党中央弁公庁主任(同前)、李希広東省党委書記(同前)、何立峰国家発展開発委員会主任(党中央委員)、林鄭月娥香港特別行政区行政長官、崔世安マカオ特別行政区行政長官、董建華元香港行政長官、梁振英前香港行政長官、何厚鏵前マカオ行政長官ら忠臣がズラリ控え、直立不動のまま両手だけを大仰に動かして拍手した。

習主席は、爽快な秋空の向こうに広がる香港を仰ぎ見ながら述べた。

「港珠澳大橋の建設は、国家の重要事業だった。われわれが大橋の設計・建設・運営に参画し、聡明な才知を発揮し、多くの世界的難題を克服したのだ。これは世界の最も先端的な管理技術と経験の集積なのだ。国家の山道を切り開き、水面に架橋したのだから、その奮闘精神は非常に立派なものだ。わが国の総合的な国力と自主創造能力、世界一流の民族志気を勇敢に体現したのだ。

これは一つの円夢橋、同心橋、自信橋、復興橋だ。大橋建設によって自動車が通り、われわれの中国の特色ある社会主義の道への自信、理論的自信、制度的自信、文化的自信を、さらに一層固めた。このことは、社会主義はできるんだ、(習近平)新時代はできるんだということを、十分に説明しているのだ! そして港珠澳大橋の重大な工程は、粤港澳大湾区の建設のため、重要な作用を発揮するのだ」

続いて、「習近平の腰巾着(こしぎんちゃく)」としての役どころがすっかり板についてきた、香港・マカオ特別行政区担当の韓正副首相が、補足のスピーチをした。

「粤港澳大湾区の建設は、習近平総書記が自ら計画され、自ら手配され、自ら推進されている重要な国家戦略だ。港珠澳大橋の開通は、3ヵ所の人員交流や経済貿易の往来、粤港澳大湾区の発展、珠三角の地域の総合的競争力を引き上げるのに有利に働くものだ。香港とマカオが国家発展の大局に導入されるのを支持するものであり、内地・香港・マカオの相互の協力が具体的に進んでいく重要な意義を持つのだ」

この二人の幹部が共に口にしていた「粤港澳大湾区」(Guangdong-Hong Kong-Macao Greater Bay Area)という言葉がキーワードだ。いわゆる広東省・香港・マカオを一体化させる「グレーター・ベイエリア」構想である。

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