「目的」を明確にすることで、人生の“成功”の形は変わる

今こそ知りたい! 「方法論」より「目的論」(8)
問題を解決しようとがんばっているけれど、自分が少しかわいいゆえに、その場しのぎの決断を繰り返す――そうして本来の「目的」を見失い、「方法論」ばかりに目を向けるこの国のリーダーたち。一方、一流アスリートたちは、「なぜ?」「どうして?」を繰り返し掘り下げて、正しい戦略のもとに正しい努力を積み上げて成功を収めている。
スポーツアパレル「アンダーアーマー」の日本総代理店・株式会社ドーム代表取締役CEO・安田秀一著『「方法論」より「目的論」「それって意味ありますか?」からはじめよう』より注目の章を短期連載!

僕が「経営戦略」を語らない理由

ここまで「個人」「組織」そして「社会」など世の中のあらゆることが、じつは「目的論」に基づいて進めていくことでより良い結果につながっていく、ということを、僕自身の体験や交流のあるトップアスリートたちから実際に聞いた体験、そして彼らがメディアなどで公にしている情報をもとにしてお話ししてきました。

スポーツアパレル「アンダーアーマー」の日本総代理店・株式会社ドームCEO・安田秀一氏 撮影/渡辺充俊

何を目指しているのかという「目的」をクリアに設定すること、目的をあたかも「御本尊様」のように崇めることで、個々の決断の軸となり、迷走や混乱を極小化できることは言うまでもありません。もし、あなたが組織や家族のリーダーであればなおさら、なぜこの組織は存在しているのか、その目的を明確にすることで、自ずと日々の生活が変わっていくはずですし、チームメンバーもその方向に向けて自走をすることが可能となります。

そのようにブレない「芯」をつくること、目的を最上位の価値に置くことで、あっちに行ったりこっちに行ったり、という迷走がなくなるだけでなく、フラットで柔軟な思考力が身につくはずです。そしてそれは「自分は何者か」「自分たちは何のために存在するのか」「この社会とはそもそもだれのためにあるのか」というような作業の繰り返しで人生に深みが増し、素晴らしいリーダーとなり得るでしょう。

たとえば、あなたが名門高校野球部の監督だとします。「勝つ」ことを目的地に設定し、それを最上位の価値として崇めたらどんな指導を行い、どんな決断を日々行うでしょうか?

そこでも引き続き「なぜ勝たなくてはならないのか?」――ここに、思考を持って行ければ、本当の目的地により近づくことができるのではないでしょうか。

目的思考をより深めることで「勝つことを通じて、自分と生徒たちを成長させること」、そんな目的地を設定することができるかもしれません。

そう考えると「勝つ」ことは手段であって、本来「目的」にはなり得ないことに気づくはずです。「勝つ」という手段の背景にはいろいろな目的が潜在しているので、本当に勝ちたい理由を考え抜くことが肝要です。

このように、「目的の力」をうまく活用すれば、個人としても、組織としても、そして社会としてもさらなる「成長」をしていくことができるのです。

余談ですが、こういったことが、僕がこれまでメディアや講演などで、マーケティングとは? などという経営戦略などをお伝えしていない理由です。

事実、いろいろなところからドームを成長させた秘訣や、自身の経営戦略や経営哲学について語ってほしいというご依頼をいただくことがあります。マスコミなどのインタビューでも記者さんからは必ずと言っていいほど同じような質問をいただきます。

しかし、僕はそのたびに丁重にお断りをするか、話題をそらすようにしてきました。企業秘密で教えたくないとか、意地悪でそのようにしているわけではなく、それがみなさんにとって価値のある情報になるとは思えないからです。

まさに「それって意味ありますか?」ということです。

ドームの経営戦略は、この業界で、僕たちの会社だからこそ成立しているようなところがあるものですから、それをまったく関係のない外部の方に語ったところで、それを活用することはなかなかできないでしょう。活用できない戦略をお話ししても、「へえ」となるだけで、何の意味もないと感じてしまうのです。

そもそも組織を成長させているのはあくまで「目的論」だと考えています。ですから、「目的の力」をわかっていただけるように、ドームの目的やビジョンはいくらでもお話をしますが、細かな事業戦略という「方法論」を語ることには抵抗があるのです。

個人の目的、組織の目的、そして社会の目的をとことん追求していくと、最終的にはあるひとつの「目的論」へと集約されていきます。そのような意味では、「究極の目的論」と言ってもいいかもしれません。

それは何かというと、「人は何のために生きているのか」ということです。

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