試合全員出場をモットーに

加えて、末本さんは「誰が出ても勝てるチームにしたいし、全員が出るのが大事だと子どもに感じて欲しい」と言い続けた。試合の勝ち負けにとらわれず、子どもたち全員の成長を最優先するコーチたちの姿は、親たちの大きな学びをもたらした。
公式戦では、点差や試合の状況にかかわらず、大胆にメンバーチェンジをするのだ。他のチームは3点くらい差が開かないとベンチメンバーを出してこないのに、大豆戸は全員出場をモットーにしていたのだ。

「親の中には、えっ?もう交代させちゃうの?と感じる人もいたと思う。レギュラーで固めたまま戦ったほうが勝率は上がりますよね。子どもは勝ちたいからレギュラーで戦ったほうがいいと考えるかもしれません。けれど、そのときわからなくても、後でわかればいいと思う。どんな子たちにも試合に出てサッカーが楽しいと思ってほしいんですね。卒団時に、全員に楽しかったと思わせるのは相当大変なことだと思う。補欠の子に、一緒に練習をしている君もチームの一員だよとか、コーチはいくらでも青臭いことを言えるのに、それをやらない。そこが素晴らしい」

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飯塚さん自身「口出しし過ぎちゃう、声をかけ過ぎちゃうところがあった」という。それをやっちゃダメ。ああしなさい、こうしなさい。そんなふうに世話を焼く親からすれば、大豆戸のコーチたちの対応が物足らない。したがって、「もっと叱ってよ、注意してよ、世話焼いてよ」ともやもやした。自由を与えていると言いながら、ただほったらかしなのではないか――そう考えた時期もあった。

子どもたちは楽しいのに、親たちは心配でハラハラしていた。

「でも、ふと気づくと子どもがすごく成長しているわけです。何でも自分でやるし、自分の意見を言ってくれる。ああ、このまま大豆戸に任せようと思えました。親である私自身も成長できたかなと思います」

ただ楽しい――大谷翔平選手も楽しいから野球をやっているのが伝わってくる。楽しく運動すること、自分たちで決断してやること。その環境が整っている 写真提供/大豆戸FC