朝8時56分に1機目が、9時3分に2機目が、隣接した高層ビルに突入する――そんな信じがたいことが現実になってしまったアメリカ同時多発テロ。2001年9月11年のあの日から、その犠牲となってしまった一人・杉山陽一さんの妻の晴美さんが20年を振り返る。

晴美さんの著書『天に昇った命、地に舞い降りた命』の再編集と書下ろしで伝える連載6回。当時3歳と1歳、そしてお腹のなかにいる子供たちを育てていくためにも、9月11日に行方不明になった陽一さんの「退職」と「死亡」を受け入れ、3歳の長男にそのことを自分の口で伝えた晴美さんが、陽一さんとの10年目の結婚記念日である1月を迎えたときのことをお伝えする。前編では子供たちと過ごした元旦と、陽一さんも大好きだったお雑煮の話をお届けする。

2001年12月、9月11日に崩落したワールド・トレード・センター跡地では撤去作業が着々と進められていた Photo by Getty Images
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お正月が大好きだった夫が帰ってくるかも…

【1月1日】
わたし一人と子供たちという生活スタイルも定着しつつある中、年が明けた。
お正月? アメリカでは三が日なるものは存在しない。1月1日は祭日であるものの、2日から出勤の会社も多い。太一たちの通う保育園も元旦のみの休暇である。

そもそもそんなアメリカであったが、近所の日本食を売るスーパーでは、年末、おせち料理の食材がずらりと並んでいる。元日たった1日の休みでも、お正月気分に浸りたい……それが日本人というものなのだろう。わたしとて同じ気持ち。元旦はおせちを並べ、お雑煮を食べ、朝からお酒なんて飲んでしまったり……。

結婚してこの10年、そのパターンは崩さなかった。お酒はけっして強くはない夫であったが、元旦は午前中から赤い顔をし、こはだの粟漬けなんかを所望していたものだ。

さてでは今年はいかに? 喪中につきお正月なし? しかし、お正月が大好きだった夫が、おせち料理を食べるために、突然帰ってくるかもしれない。ということで、年末おせちその他の材料をしこたま買い込み、元旦は朝からせっせとお雑煮作り。できたお雑煮が、これまた今年は本当によい出来。出汁がよく出て本当に夫好み。

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ああ、これを食べさせたかった。今年のこのお雑煮を食べたら絶対に「うまい。これはうまい!」と言っただろう。わたしのことは絶対ほめない夫であったが、食べ物だけは美味しい時は美味しい美味しいと連呼する夫であった。