中絶医の暗殺、中絶クリニックへの襲撃も

日本より女性のリプロダクティブヘルス・ライツが充実しているアメリカだが、近年、中絶クリニックが閉鎖に追い込まれ、生殖の権利が女性の手から離れていっているのを知っているだろうか。

アメリカで中絶が合法になったのは1973年。以来、女性の中絶権を支持するプロチョイス派(女性の選択を尊重する)と、反対するプロライフ派(胎児の命を尊重する)が、ときに殺人事件にまで発展するほど血みどろの闘いを繰り広げてきた。

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といっても、中絶医を暗殺したり、中絶クリニックを襲撃したりするのはプロライフ派だ。作中、中絶クリニックを訪れるオータムとスカイラーが、クリニック前でデモをするプロライフ派に驚くシーンがあるが、プロライフ派は中絶しようとする女性への説得を目的に、クリニック前で待ち構えているのだ。

映画を観れば分かるが、プロライフ派には狂信的な人が多く、オータムと同じクリニック「プランド・ペアレントフッド」(中絶手術、避妊薬処方、性病治療などを行う非営利団体及びその施設)避妊注射を受けに通っていた筆者も、クリニックに入るのを妨害されたことがある。あちこちから腕を引っ張られて、非常に怖い思いをした

プロライフ運動には様々な宗派の人が参加しているが、もともとはカトリック教会の一部グループから始まった。彼らは教会の経済力と組織力を活用し、国政・地方政治に働きかけて、なんとか中絶を非合法化しようと憲法修正に向けて運動してきた。

そして、保守派の政治家も、票を獲得するため中絶論争を利用する。レーガン、ブッシュ、トランプら保守である共和党の大統領たちが、最高裁判所に保守派の判事を送り込み続け、現在、最高裁のマジョリティは保守派の判事が占めるようになった。その結果、多くの州が「中絶制限法」を成立させて、中絶クリニックを閉鎖に追い込んでいるのだ。