ゼロから設計したレコードプレーヤーが話題! “研究開発型町工場”がすごい!

3代目社長に聞くモノづくりの未来形
リケラボ プロフィール

製造業をプロデュースして面白さを知ってもらう

——知ってもらう、見せることにこだわるという点では、先ほどのINDUSTRIAL JPの動画も、ものすごくカッコいいですね!

これは町工場の機械音をサンプリングして作った映像作品で、大手広告代理店の同級生と始めたプロジェクトです。由紀精密だけでなく、いくつかの町工場が参加してくれています。

私たちが小さい頃は、超合金のロボットを作ったり、ラジコンを自分で組み立てて走らせたり、遊びの中で機械に触れることが多かったのですが、今の子ども達ってスマホとかデジタルの世界で面白いものが多く、リアル世界のモノや機械に触れる機会は少ないですよね。それで、メカの面白さが伝わるような映像を通じて、「製造業は格好良くて面白い」ということを、もっと知ってもらいたいと思って作りました。

——いろんなクリエイターの方とコラボしたMVは、サウンドと機械の動きがピッタリ合って心地よく、これぞクールジャパンのものづくり!と感じました。

YouTube にあげたらいきなり数十万回再生を記録して、広告やデザインの分野でも著名な賞をいただきました。「製造業ってこんなことやっているんだ。知らなかった」という感想もいただいています。映像を見て面白いと思ってくれた人の中の何人かでも、製造業に興味を持ってくれて、働いてくれたり、盛り上げてくれたらいいなと考えています。

——町工場って、質実剛健と言うか、昔ながらの地味なイメージが一般的だと思うんですが、これを見たら、必ずしもそれだけではないとわかってもらえそうですね。

町工場を新しい感覚で捉えなおしてもらえたら嬉しいです。

町工場の金型加工や微細加工技術は、いまでも世界トップクラスです。長年培った技術に加えて、最新の技術や機械も取り入れながら進化しています。その技術が失われることを阻止したいという想いが強いですね。大手に比べるとマーケティングや発信力が弱いので、知られにくいというのがありますが、知ってもらえれば、新たな用途が見つかる技術がたくさんあると思います。だから、積極的に発信して製造業全体をプロデュースしていきたいんですよね。

中小企業だから叶えられる面白さがある

——大坪社長のように、家業を継ぐために戻る人は増えているのでしょうか?

私のように2代目、3代目が一度外の会社に勤めて実家に戻り、面白いことをやっているところは増えています。中小企業は小回りが利き、少ないロットでも生産が可能なことが特徴です。しかも高品質なものを早く、低コストで作る技術もあります。なので、世の中で見たことがないものを作っているところも多いです。INDUSTRIAL JPに登場する町工場もそうですね。中小製造業は、以前よりももっと、ものづくりの面白さを味わえる場所になりつつあるんですよ。

——大坪社長のような人が増えると、町工場全体がどんどん面白くなりそうです。

社員には能力をフルに使って自立してもらえるといいなと思っています。会社がその人の枠を決めてしまうと、それ以上の活躍はできなくなってしまいます。私としては伸びるところがあるなら、勝手に伸びていってもらいたいと思っているんです。上司は部下の邪魔をしないで、その人たちの持つポテンシャルを最大に発揮できる組織にできればすごくいいなと思っています。

——由紀精密としては、今後はどのようなことに取り組みたいと考えておられますか?

いろいろな社会の課題を技術で解決していきたいですね。技術って人間の可能性を拡張できる一方で、デメリットもある。例えば技術発展の負の側面として環境破壊の問題がありますが、それを解決するにも技術が必要です。由紀精密では、宇宙ゴミを除去する取り組みも始めていますし、医療や林業での仕事にもそういう想いがありますね。

また先端技術と要素技術を結びつけて、発展させることにも力を入れていきます。グループ会社に明興双葉という電線を製造している会社があるのですが、そこも金属線を髪の毛より細く加工する唯一無二の技術を活かして超伝導ワイヤーの開発を行っています。学会で発表したところいろんな研究機関から話が来て、将来的にはリニアモーターや核融合炉で活用が期待される線材の共同研究が始まっています。中小企業が秘めているポテンシャルって本当に高いんですよ。由紀精密だけではなく、グループとして製造業を面白くしていきたいですね。

株式会社由紀精密 代表取締役
大坪正人(おおつぼ まさと)

1975年に神奈川県茅ヶ崎市に生まれる。東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻を修了後、携帯電話の試作金型を製造するベンチャー企業に入社。世界最高速の金型工場の立ち上げ、外部企業のコンサルティングを手掛けるなど、多岐に渡る業務に携わる。2005年には「第1回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」を受賞。その後、2006年に由紀精密に入社、2013年に同社社長に就任。
由紀精密
1961年創業。神奈川県の本社工場のほかに、横浜ファクトリー、東京オフィス、フランス支社を持つ。「ものづくりの力で世界を幸せに」をミッションに、精密加工技術を活かした電気電子、電機機器部品、産業用機械部品、一般精密機械部品、医療機器、航空部品等のあらゆる産業の部品加工、機械の設計、それに伴うサービスを展開している”研究開発型町工場”。
https://www.yukiseimitsu.co.jp

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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