ローラとの出会い

『キンキーブーツ』のローラは、春馬さんが2016年と2019年に演じ、読売演劇大賞杉村春子賞を受賞した大切な役だ。斉藤さんは春馬さんと一緒に、ローラ像を作っていった。春馬さんは懸命に特訓してローラのオーディションに臨み、合格した。

2013年にブロードウェイで開幕、ロングランを続けるミュージカル『キンキーブーツ』初日のカーテンコール。シンディ・ローパーが楽曲を担当、今にもつぶれそうな靴屋をドラアグクイーンが「カッコイイヒールのブーツ」で蘇らせる物語は、主人公のドラアグクイーン、ローラが高いヒールのロングブーツで歌い踊る姿も話題になった Photo by Getty Images
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「オーディションに受かった春馬くんは、嬉しくて、ニューヨークでハイヒールを買ってきました。『ハイヒールを履くには半年かけなくちゃ』と言うと、『なんで?』とがっかりする春馬くんの顔がおかしかったですね。3センチヒールのおうちスリッパから徐々にならして、筋肉をびっくりさせないようにとアドバイスし、骨学の本を見せて、重心の取り方を教えました」

さらに、ローラを演じるために、作風に合う歌の先生を探すよう、春馬さんに勧めた。

「オーディションの前は、発声の基礎練をがっつりして、訓練しました。それから、ローラの役作りをしなくちゃということで、R&Bやゴスペルの歌手を探すように伝えました。春馬くんが、自分でゴスペルの先生を探してきました。

歌って踊るのは、楽しそうでした。座長としては、カンパニーの仲間と同じ釜の飯を食べて、仲良くなる素晴らしさを感じ、成長しました。気の合う友人ができて、ずっと付き合っていました。杉村春子賞を受賞した時は、実力が認められたと本当に喜んでいました。それまで見たことがない笑顔でした。3年の間に、通常の10倍ぐらいの経験をしたのではないでしょうか」

2016年にはミュージカル『キンキーブーツ』LA公演初日に、日本人キャストを代表して出席。チャーリー役のアダム・カプランとエンジェルスのひとりサム・ローロフと、記念撮影 Photo by Getty Images 

プチ留学…英語の勉強も熱心に

忙しい仕事の合間に、春馬さんは、英語の勉強も熱心にしていたという。
 
「時間ができると、プチ留学をしていました。私が内容を聞いて『勉強の効率が悪い』と指摘したら、落ち込んでいました。そこで私の生徒で、テノール歌手の勉強をしている同世代の男性を紹介したところ、彼からいいアドバイスをもらったようです。ローラのトレーニングでニューヨークに滞在していた時、春馬くんは休日に彼のいるボストンまで高速バスで会いに行きました。大学見学をしたり、レッスンを受けたり、『将来、アメリカで共演しようね』と約束して、楽しかったみたいです。

春馬くんに必要かなと、専門性の高い人を紹介すると、持ち味ですぐ仲良くなって、切磋琢磨できる仲間になりました。芸能関係でない人も、たくさん紹介しました。バイクやカメラ、ギターの達人たちです。私とも7年の間に、師弟関係を築くだけではなく、趣味仲間にもなりました」

◇斉藤さんインタビュー第2回では、斉藤さんが見た素顔の春馬さんと、最後のレッスンについて紹介する。