K:同じことを同時多発的に言葉にしているっていう偶然が嬉しいです。
「お姉さん達が教えてあーげる」っていう、主体性というか、ボッコボコにしてる感じが本当にいいですね。アイドルというと、たとえば国際的な批判があったり、フェミニズムの観点から否定されることもありますけど……。
H:女性性を消費されている存在だと捉えられることはありますよね。この小説の中では、さっき話に出てきた真子ちゃんがSNSでエゴサしてレスも全部読んですごい楽しそうだけど。
K:フェミニズムには賛成しているけれど、「消費されている」という見方もまた一義的で、ひとつの定規でしかはかれていないと思うんです。そういう定規もあれば、こういう規格の違う定規もありますよと言いたい。それは決して旧時代礼賛ではなく、たった今より一歩先のあり方を模索したいです。
それはリアルか、フィクションか
K:エゴサと言えば、作品の感想をエゴサしていたんですが(笑)、「誰にも〜」については「アイドル残酷物語」とか「アイドル業界の暴露」と読んでいた人もいたみたい。
H:へーーー! 残酷も暴露も違う気がするけど……児玉雨子がアイドルについて書いてるから、というバイアスがかかるんでしょうか。まぁ実際、児玉さんはアイドルとも仲良いしね。
K:いずれにしてもフィクションはたっぷり混ざっていて、これがリアルというわけじゃない。リアルなのかリアルじゃないのか、ギリギリに肉薄させるというのがアイドルのあり方だと思ってもいるので、そういう意味では「アイドル小説」と言ってもいいのかもしれません。
でも同時に「兼業作曲家小説」で「銀行員小説」で「クソみたいな人間たちの小説」でもある。だから読んでムカついて欲しいし、他人事じゃないものとして読んでもらえたらと思っています。