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遺伝学に大きな影響を与えた「キツネの家畜化」実験をご存じですか?

サイエンス365days

"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

迫害を受けながらも続けられた実験

1917年の今日(7月17日)、ソ連の動物学者ドミトリ・ベリャーエフ(Dmitry Konstantinovich Belyayev,1917-1985)が誕生しました。

 

彼はキツネを家畜化するための大規模な交配実験で知られています。

1917年にロシア帝国のコストロマ州で生まれたベリャーエフは、当時としては珍しくメンデルの遺伝説を支持していた遺伝学者であった兄の影響を受け、幼い頃から遺伝学に興味を持っていました。

当時のソ連ではダーウィニズムやメンデルの遺伝学を信じる学者が迫害されており、そのせいもあって彼は時に職を追われたりもしました。しかし、次第に国家の締め付けが緩くなっていき、1963年にノボシビルスクの細胞学・遺伝学研究所の所長に就任しています。

さて、その頃ベリャーエフとその同僚はイエイヌの家畜化について興味を持っていました。イエイヌはオオカミから分岐したと考えられていましたが、そのメカニズムなどはよくわかっていませんでした。

ベリャーエフは「イエイヌなどの家畜化された動物に見られる身体的、行動的な特徴は彼らが人間に対して従順になった結果現れものである」という仮説を立て、それを実証する実験を行いました。

そこで対象として選ばれたのがキツネです。彼は大量のギンギツネを選択的に交配させることで、オオカミからイエイヌになるような野生生物の家畜化のプロセスを短時間で模倣しようとしたのです。

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彼は人間に対してあまり攻撃しないキツネを交配させることでより友好的なキツネを作り出しました。やがて、交配が進むと友好的なキツネには垂れた耳や白いまだら模様などの「家畜化された動物が持つ特徴」が現れてきました。

彼の仮説は正しかったのです。

その後、2010年に別の生物学者が人間に対して友好的なキツネ、攻撃的なキツネ、その中間の一般的なキツネの3グループのゲノム解読を行ったところ、103ヵ所もの違いが見つかっています。

彼の実験は様々な動物が家畜化されるメカニズムの解明につながることが期待されており、最も意義深い遺伝実験の一つとして現代遺伝学にも大きな影響力を持っています。

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